「高級ホビーからビジネスまでの多才パソコン」
8ビット機全盛期は、NECが圧倒的なシェアを誇っていたとは言え、他社も多数参入しており、NEC・富士通・シャープはパソコン御三家と呼ばれたこともあった。
ここで取り上げるFM-8は、富士通が発売したマシンであり、本体キーボード一体型だった。PC-8001対抗機としては価格が5万円の差があった。
多くのメーカーは、ザイログ社のZ80をCPUに採用していたが、富士通はモトローラの6809系を採用した。また、グラフィックス用に別途CPUをおくことで高速化を図り、マルチCPUマシンとも呼ばれた(もっとも、他社ではグラフィックスはメインCPUに描かせたが、キーボードやカセットなど入出力部分にはサブCPUをおく設計にした)。
当時は、FDDの値段が非常に高額だったため、もっぱらプログラムやデータの読み書きにはカセットテープを使っていたことは他社製品と同じだ。
イメージキャラクターは伊藤麻衣子を起用。
FM-8ハードスペック
- CPU
■メインCPU
MBL68A09(4.9152MHz)
■サブCPU
MBL6809(4MHz) - ROM
32KB(F-BASIC V1.04/1.05) - RAM
64KB - VRAM
48KB - テキスト表示
グラフィックス画面と共用で80×20/25、40×20/25から選択 - グラフィック表示
640×200ドット1画面/8色表示 - 漢字ROM(オプション、本体基盤に実装可)
JIS第一水準漢字2965種、非漢字453種 - 日本語表示
漢字ROMを実装すれば、グラフィックス画面に40字×12行表示できる。 - サウンド
BEEP音のみ - 本体内蔵オプション
Z80カード
8088カード(メインCPUと切替使用) - バブルカセットホルダ
空き部分には鉄製の箱が取り付けられており、俗に小物入れと呼ばれた。 - 外部拡張オプション
8インチ/5インチFDD/拡張ボックス 他 - 動作するOS
OS-9
FLEX
CP/M-80(Z80カード搭載時)
CP/M-88(8088カード搭載時)
F-BASIC(DISK-BASIC)
他 - 発売
1981年5月 - 希望小売価格
218,000円
拡張スロットはなく、別途拡張ボックスを用意する必要があった。バブルカセットやRS232Cが標準装備だったことから、ビジネスマシンとして想定されていたようだ。アナログポートが装備されており、ここに接続できるジョイスティックが他社から発売されていた。
CPUは6809系だが、オプションでZ80カードが用意されており、CP/Mを稼働させたり、8088カードを取り付けてCP/M-86を稼働させたりすることもできた。
- Z80カード
品番MB22401
価格11,700円 - 8088カード(5.25インチFD版CP/M-86が付属)
品番MB28011
価格50,000円 - 8088カード(8インチ版CP/M-86が付属)
品番28013
価格50,000円 - 8088カード(5.25インチ版CP/M-86が付属)
品番MB28012
拡張RAMモジュール付き
価格50,000円 - 8088カード(8インチ版CP/M-86が付属)
品番28014
拡張RAMモジュール付き
価格50,000円
翌1982年12月にはまだ一般的でなかったRS-232Cはオプションとし、ほとんど不必要といえるバブルカセット、アナログ入力ポートを削除し、コストダウンを図ったFM-7が発売された。これを見たマニアの中には、PC-8801をそのまま安くした機種を想像して、またNECの勝ちか…と思った者もいたようだが(月刊マイコン1983年)、残念ながらPC-8001MKIIの発売になった。
寸評:実際は企業でビジネス用途を想定していた