MSX1規格について

MSXとはMSX規格の一つで、1983年に最初に制定された規格で、後にMSX2などの後継規格のものと区別するために「MSX1」とも呼ばれます。

MSXは、よいパソコン悪いパソコンなどの著者(大場俊介)から、「M」は松下(当時)、「S」はSONY、「X」はその他のメーカーという言い方をされたことがありますが、元々はマイクロソフトとアスキーが提唱した規格で、ホームパソコンを指向したものでした。

MSXの主な仕様

  1. CPU:ザイログ社 Z80A相当品(クロック周波数3.579545MHz、割り込みはモード1)
  2. ROM:32KB(キロバイト) BIOS、MSX-BASIC
  3. メインメモリ(RAM):8~64KB(キロバイト)
  4. 画面制御(VDP):テキサス・インスツルメンツ社 TMS9918相当品、VRAM16KB(キロバイト)
  5. サウンド:ゼネラル・インスツルメンツ社 PSG(AY-3-8910)※PSGはジョイスティック端子の汎用I/O機能、PPIは1ビットサウンドポートの役割を兼ねる。
  6. PPI(周辺機器インターフェース):8255相当品
  7. 拡張スロット:最低1個

画面モード

  1. SCREEN0:テキスト40×24文字(1文字6×8ピクセル) 文字・背景とも固定16色中1色 スプライト使用不可
  2. SCREEN1:テキスト32×24文字(1文字8×8ピクセル) 文字・背景とも固定16色中1色 単色スプライト使用可能
  3. SCREEN2:グラフィック256×192ピクセル 固定16色(横8ドット内2色まで) 単色スプライト使用可能
  4. SCREEN3:グラフィック64×48ピクセル 固定16色 単色スプライト使用可能

CPUやVDPが同じであるため、カタログスペックではソードM5やセガSC-3000に似ており、当時のゲーム機兼用の安価なパソコンとしては標準的な仕様でした。以下のような点から、入門機としてはある程度普及していたと言えます。

  1. 当時の一般的なパソコン(PC-8800シリーズ等)と比べると、遥かに安価に購入できる。
  2. 一般的な家庭用テレビやビデオデッキにそのまま接続できる。
  3. ゲームがカートリッジで手軽に遊べる。

しかし、画面表示では他機種や同年に発売されたファミコンと比べ見劣りし、特にファミコンでは販売台数で大きく水をあけられることになりました。それからまもなくして、次の規格であるMSX2が発表されることになります。

MSXに参入したメーカーと発売した主な機種

カシオ計算機

PV-7、PV-16、MX-10、MX-15、MX-101:全ての機種の本体に1プレイヤー用のゲームパッドが一体化されており、低価格路線で勝負。

キヤノン

ベガ:V-8、V-10、V-20:シンプルでまとまりの良い筐体デザインが専門誌で評価され、広告でも「ハンサムMSX」を謳い文句にしていた。

三洋電機

WAVY MPC-3、MPC-10、MPC-11:WAVYは「MSXはマイコンの第3の波になる」という思いから名付けられた。MPC-10と11はライトペン標準装備。11は加えて、スーパーインポーズ機能・2階調ビデオデジタイズ機能を搭載。

三洋電機特機

PHC-27、PHC-30、PHC-30N、PHC-33:三洋電機特機は、MSX以前からパソコンを製造・販売していた三洋電機のグループ会社。仕様や筐体デザインはWAVYシリーズとは全く異なる。データレコーダーを標準搭載(音声出力はモノラル)。月刊アスキー等の総合誌では記事・広告が載っていたが、MSX専門誌ではほとんど取り上げられなかった。

ソニー(MSX内でトップシェアを誇ったと言われる)

HiTBiT HB-55、HB-75、HB-101、HB-201、HB-701、HB-701FD、HB-10、HB-11

東芝

パソピアIQシリーズ:HX-20系はワープロソフト内蔵だった。

日本ビクター

HCシリーズ

オプションでVHDプレイヤーと接続可能。ヤマハ製MSXと同じくミツミ電機から部品提供を受けて作られ、筐体デザインに多くの共通点が見られる。ただし、最初の機種はヤマハ機と同じスロットコネクタがあったが、後続機種では背面の増設用端子が無くなっている。

パイオニア

Palcom PX-7、PX-V60

レーザーディスクプレイヤーと、プリンターポートを通して接続可能で、プレイヤー制御用の拡張BASIC P-BASIC搭載。MSX1では珍しいキーボード分離型。スーパーインポーズ機能対応、音声出力はステレオ。(金丸斉『レーザーディスクテクニカルブック』 株式会社アスキー ISBN 4-87148-206-5による)

日立製作所

MB-H1、MB-H2:両機ともキャリングハンドル付きで持ち運びを想定していたようだが、3kg以上あり、他の機種と比較しても決して軽くはない。MB-H1はLP ジャケットサイズ、初期型と後期型ではカーソルキーの配置が異なる。MB-H2はカセットデッキ搭載(音声出力はステレオ)、拡張BASICから再生・停 止・巻き戻し・早送り等の操作が可能。

富士通

FM-X:FM-7(FM-NEW7含む)を接続し、増設RAMとして使用可能。また、FM-7側でもFM-XをZ80ボード代わりに出来る。

ゼネラル(現富士通ゼネラル)

PAXON(パクソン):テレビ内蔵型MSX。映像出力端子を備えていない、標準ではキーボードが付属しない、等、非常に特殊な仕様。カセットテープで供給されるゲームソフトを動かすために、チャンネルに並んでCLOAD、RUNボタンがある。

三菱電機

ML-8000、Let us(レタス)シリーズ

松下電器産業(現パナソニック)

キングコング CF-2000、CF-2700、CF-3000、CF-3300、CF-1200、FS-1300、FS-4000ナショナルブランド。CF-2700、CF-1200、FS-1300は同一筐体。CF-3000はセパレートタイプ。同3300はFDD搭載型。FS-4000はワープロソフトおよび熱転写プリンター内蔵。

日本楽器(現ヤマハ)

YIS(ワイズ)シリーズ、CXシリーズYISはAV機器、CXは楽器の流通で販売された(他に月販事業部からも"YIS-MAN"という機種の発売が予定されていたが発売されなかった)。筐体色以外はほぼ同一の仕様。オプションで専用スロットにFM音源とMIDI端子を搭載可能。当時一世を風靡していたシンセサイザDX7等との連動が最大の売り。通常スロット・専用スロットの他に、背面にスロットコネクタ増設用端子がある。筐体の大半はミツミ電機製。
ヤマハは全メーカー中最初にMSX参入を公式発表したが、筐体写真の発表もこのシリーズが全機種中最も早かった。

大宇電子(デーウー。韓国、日本国内での発売は無し)

DPC-100、DPC-180、DPC-200

金星電子(ゴールドスター。現LGエレクトロニクス、韓国、日本国内での発売は無し)

FC-80、GFC-1080

スプレッドシートのパソカルクがロム内蔵。ソフト単品は1984年トカイクリエイションから発売、ロムカセット、9800円

※シャープも1983年7月にMSXへの参入を発表するが、ブラジル法人が現地向けにMSX1「HOTBIT」 HB-8000などを発売したのみに終わっている。

※新日本電気/NECホームエレクトロニクス(現日本電気、NECグループ各社)1983年6月16日のMSXの発表会にNECのパソコン部門の責任者が出席して挨拶している。しかしMSX機は敢えて出さなかった模様。

各社から発売されたMSX1マシンを見ると、各社毎にワープロなど、独自仕様をつけていたことが分かるでしょう。このことも、こちらのMSX、あちらのMSXという互換性のない状況を作り、結果的に失敗する一因となったとみる人もいました。

あとがき
当時すでに登場していたファミコンにも劣る規格なので、MSXを買ったユーザーのほとんどはゲームをするならファミコンの方が楽しいと感じていたらしい。そういうこともあり短期間でこの規格は終わり、後継のMSX2規格へと変わっている。
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