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NECの16ビット機には、PC-9801の他に、N5200/05シリーズがあり、NECのパソコンカタログや広告に他のPCシリーズと一緒に載っていた。
1981年に発売を開始。オフコン・ワークステーションに分類されることもあり、またN5200シリーズの発展形として、N5300シリーズも存在した。
企業のオフィス・オートメーションの他、専門学校などの実習用に使用された。
初代機は1981年7月に発表、12月から出荷開始された。OSにはNEC独自開発のPTOSを採用。採用している言語がFORTRAN、COBOLであることから、N5200シリーズは個人を全く相手にしていないことがはっきりするだろう。
本機はPC-9800シリーズではないが、ここにまとめて掲載する。
N5200/05のハードスペック

- CPU
μPD8086(8086互換) - ROM
4KB。バックアップメモリ4KB。 - メインRAM
128KB。拡張RAM128KB。 - CRT
本体内蔵。12型 - 表示文字量
英数カナ特殊記号80文字×25行
日本語40文字×25行 - 表示文字種
英数カナ特殊記号:156種
JIS第一漢字+α:3,858種 - 文字構成
英数カナ特殊記号:11×7ドット
日本語:16×15ドット - 表示色
モノクロ:グリーン
カラー7色(青、赤、マゼンタ、緑、シアン、黄、白)。 - グラフィックス表示
640×456ドット
専用グラフィックバッファ:1024×1024ドット - 表示機能
シークレット、ブリンキング、ハイライト、リバース、オーバーライン、アンダーライン、バーチカルライン - キーボード
JIS標準キーボード
インテリジェントキーボード
いずれか選択可
※セパレートタイプ(本体とカールケーブルにより接続) - シリアルI/F
RS232C仕様準拠 - プリンタI/F
パラレルI/F。セントロニクス社仕様準拠 - 内蔵FDD
8インチFDD(2D)2台内蔵。1MB(IBM互換)または243KB(IBM非互換)
増設により4台使用可 - サウンド
2オクターブ - カレンダ時計
月、日、時、分、秒。NiCd電池でバックアップ - 電源
AC100V±10%、50/60Hz - 使用条件
10~30℃,20~80%(但し結露しないこと) - 外寸法
本体:(W)500×(D)460×(H)350㎜
JISキーボード:(W)500×(D)230×(H)60㎜
インテリジェントキーボード:(W)560×(D)300×(H)60㎜ - 重量
本体:27kg
JISキーボード:4kg
インテリジェントキーボード:7kg
CRTはグリーンモニタとカラーディスプレイ仕様とがあり、いずれかを選択する。キーボードも2種類用意されており、いずれかを選択する。FDDは8インチ2台のものと1台のものとがあり、いずれか選択可。
シリーズラインナップ
- N5200/05:モニタ、FDD 一体機。HDDは外付け。オフィスプロセッサのワークステーションとして連携動作する機能はない。
- N5200/05mkII:05の後継モデル。HDDが内蔵された。テレビCMキャラクター:武田鉄矢
モデル05にはラップトップ型も登場した。オフィスプロセッサのワークステーションとして連携動作する機能が追加された。
- N5200/07:05の上位後継モデル。デスクトップ型。(モデル07ADI/II/IIIなど)
- N5200/07ws:07のワークステーション特化モデル。デスクトップ型。ハードディスクは内蔵されていない。
- N5200/03: PC-9801CVを思わせるようなデザインのモニタ一体機(FDDは3.5インチ×2、HDD内蔵型は3.5インチ×1)と、液晶(STN白黒やカラー)を搭載したラップトップ型やノート型(N5200 03Nなど)が存在する。
- N5200 model50:デスクトップ型
- N5200 model60:デスクトップ型。i386DX-20MHz
- N5200 model70:デスクトップ型
以下の機種はPC-9800シリーズのソフトウェアが動作する(一部を除く)『98プラットフォーム』。
- N5200 model98/80:デスクトップ型。i486SX-16MHz PC-H98 model80相当
- N5200 model98/90:デスクトップ型。i486SX-25MHz PC-H98 model90相当
- N5200 model98/105 :デスクトップ型。i486DX2-66MHz PC-H98 model105相当
- N5200 model98/T:ラップトップ型
OSにはNEC独自のPTOSを採用
OSにはNECが独自開発したPTOS(Personal Technology Oriented System)が使用された。当時MS-DOSやCP/M86は開発されてまもなく、機能が乏しい上に日本語処理に対応していなかったことが挙げられる。
PTOSのファイルシステムはメインフレーム(大型汎用機)との互換性を保つため、IBM形式フロッピーディスクを採用し、文字コードはEBCDICを採用した。コマンドやプログラムの起動方法は、アルファベットでプログラム名を入力する他、あらかじめプログラムを複数登録しておいてテンキーで数字を入力・選択するメニュー選択や、あらかじめ決めたプログラムやキーボード入力を連続的に実行するバッチ処理に対応していた。ユーザーは2つのジョブを同時に実行することができ、また各入出力装置には制御用タスクが用意されて、入出力の終了を待つことなく元のジョブの処理を継続することができた。
PTOSはN5200 model98/105(同U105)以降、PC-9821シリーズ 98MATE-Aの第二世代であるPC-9821Ap2やPC-9821As2及びその後のPC-9821An上で動くPC-PTOSに移行し、N5200シリーズと同じキー配列の PC-PTOSキーボード (PC-9801-114)が付属するPC-PTOSプリインストールモデル(PC-9821Ap2/U8P、PC-9821As2/U7P、PC-9821An/U8P)の環境に引き継がれた。ノート型においてはPTOS用のキー配列のPC-9821Ns/340Pが発売された。 また、LANPLAN/GなどのLANシリーズは、PC-PTOSを経て最終的にはMicrosoft Windows上で動くアプリケーションソフトになった。
PTOSは2000年問題で不都合が出ることが判明しているが、1999年の時点ですでに「過去の規格」とされていたため、対処は行われていない。但し、PC-9800シリーズ用のPC-PTOSについてはVer 2.5以後において対処が行われている。
PC-9800シリーズが主力になる
NEC社内ではPC-9800シリーズとN5200シリーズの主導権争いの状況だったが、最終的にPC-9800シリーズが主導権を得、N5200シリーズは衰退していくこととなる。1990年代以降は、N5200シリーズの広告を見ることもなかったし、ショールーム「Bit-INN」でも実物を見ることはなかった。
ある電子系専門学校の実習室にはN5200/05がずらりと並んでいた。これにプリンタが接続されたシステムである。情報系の学生は一人一人が教材として8インチFDを1枚購入していた。一人で2台使うようにおいてあり、ユーティリティの実行やCOBOLプログラムの作成実習等が行われていた。1980年代後半の話である。
寸評:OA化以外の目的には全く不向き
結論
このパソコンはあなたが会社のOA担当なら選択して間違いないマシンである。ということで、個人ユーザーには全く用がない。
「よいパソコン悪いパソコン」の秘密調査員報告で、NECのOAショールームで速度を見たいのでゲームをやりたいと女性店員に言ったら、「そんなものありません」と怒られたという話が載っている。