NECが現在に至るまで、国内パソコンメーカーではトップを誇る理由の一つが、TK80というワンボードマイコン(半田付けで組み立てるキット)が爆発的に売れたことと、その後登場したPC-8001がベストセラーになったことと関係がある。サービスセンター「Bit-INN」でサポートを怠らなかったことも関係している。
TK80に続いてタイニーBASICを搭載したTK80BSが発売された。TK80BSは最初半田付けのキットだったが、すぐにケースに入った完動品へと移行している。それから僅か数年でPC-8001が発売されている。
当時最低限必要だったカセット、プリンタ、CRTのインタフェースは備えていたが、フロッピードライブ(FDD)の接続には拡張ボックスPC-8011/8012の別途購入が必要だった。もっとも、当時はフロッピーディスク(FD)の価格が極めて高額であり、それで良かったのである(ディスクドライブは160KB片面フロッピー1Dのものでも32万円以上、メディアであるフロッピーディスク自体数千円だったという)。
初代PC-8001スペック

- CPU
μPD780C-1(Z80A互換)4MHz
※DMA割り込みウェイトがあるため、実際には2.3MHz程度で動作する。 - ROM
24KB(最大32KBまで実装可)
※N-BASIC搭載(Microsoft 24K BASIC)(version 1.0として発売。後に1.1に乗せ換えて再発売) - RAM
16KB(最大32KBまで実装可)
※後に32KBに増量して再発売 - テキスト表示(スクリーン構成)
80文字×25行、80文字×20行
72文字×25行、72文字×20行
40文字×25行、40文字×20行
36文字×25行、36文字×20行
※上記のいずれかを選択可能
文字単位にアトリビュート設定可。リバース、ブリンク、シークレット、カラー8色(黒、青、赤、マゼンタ、緑、シアン、黄、白) - グラフィックス機能
160×100ドット8色表示(黒、青、赤、マゼンタ、緑、シアン、黄、白)
テキストの簡易グラフィックモード使用
2×4ドット毎に着色可。
※テキストの属性として簡易グラフィックが実現されており、アトリビュートエリアの制限により、当該テキスト属性が1行内の左端から右端の方向において変化する回数に制限があったため、着色が出来なかったり意図した属性の表示がされない部分が見られる場合がある。 - CRT
R.G.B.セパレート出力方式(カラー)
コンポジットビデオ信号出力方式(輝度変調、モノクロ)
家庭用TV(別売TVアダプタ経由)に接続可 - カセットI/F
FSK方式(1200、2400Hz)、600ボー - プリンタインタフェース
パラレルインタフェース内蔵(セントロニクス規格準拠) - シリアルI/F
TTLレベル・シリアルインタフェース内蔵4800/2400/1200/600/300ボー(筐体を開けてICソケットから引き出す必要がある。PC-8062 RS-232Cケーブルユニットを用いることでレベル変換も行える)
※ターミナルモードでの実質キャラクタ、転送速度についてはマニュアルを参照。 - CMT(カセット)I/F
600ボー。 - 拡張バス
拡張ボックスのPC-8011/8012および、5インチFDD I/Fボックス接続用 - キーボード
JIS標準配列準拠、英小文字も可能
10キー、コントロールキー、5ファンクションキー
本体キーボード一体型 - 電源
AC100V±10% 50/60Hz、20W - 寸法
430(W)×260(D)×80(H)mm - 重量
約4kg - 発売年
1979年 - 本体標準価格
168,000円 - PC-8001の拡張オプション
PC-8011拡張I/Fで拡張可能なもの:RS-232C×2、FDD I/F、GP-IB。すべてエッジ・コネクタによる出力であるため、専用のケーブル (PC-8095/PC-8098/PC-8096) が別途必要。
PC-8012拡張ボックスで拡張可能なもの:FDD I/F、 拡張スロット×7
NECから発売された純正機器の例
- PC-8011:拡張ユニット ※RS-232C×2,FDD I/F,GP-IB I/F利用可 ※すべてエッジコネクタによる出力であるため、専用のケーブル(PC-8095 / PC-8098 / PC-8096)が別途必要。148,000円
- PC-8012 I/Oユニット:※FDD I/取り付け可、拡張スロット×7あり。84,000円
- PC-8023-C:ドットマトリクスプリンター 198,000円
- PC-8031/-1W:5インチ1D FDD(2基) 198,000円
- PC-8032/-1W:拡張用5インチ2D FDD(2基) 268,000円
- PC-8031-2W:5インチ2D FDD(2基) 288,000円
- PC-8032-2W:拡張用5インチ2D FDD(2基) 249,000円
- PC-8033:FDD I/F 17,000円
- PC-8041:12:グリーンCRT 49,800円
- PC-8043:12:カラーCRT 219,000円
- PC-8047:12:アンバーイエローCRT 46,800円
- PC-8044:RFモジュレータ 13,500円
- PC-8062:RS-232C I/F 18,700円
- PC-8034:DISK-BASIC(1D) 5,000円
- PC-8034-2W:DISK-BASIC(2D) 5,000円
NEC以外から発売された機器の例
- FGU-8000 高解像度フルグラフィックユニット:アイ・シーより発売。解像度は640×200ドット、モノクロ。VRAMを搭載していないので、本体メモリの16KBがVRAM領域に割り当てられる。
- PCG8100 プログラマブル・キャラクタ・ジェネレータ:HAL研究所より発売。ユーザ定義キャラクタジェネレータ(128個) + サウンド単音(後期モデルは3重和音)
- FGU-8200 高解像度フルグラフィックユニット:アイ・シーより発売。FGU-8000の改良版。VRAM用バンクメモリ16KB搭載、表示速度を約2倍に高速化。BASIC上でハイレゾグラフィックを使用するための拡張ROM(GSP-8200)標準搭載。拡張BASICは「LINEH」など通常の命令に「H」を付けたものでN80-BASICとは異なる。
- JWP-8200 漢字拡張ユニット:アイ・シーより発売。漢字ROM(JIS第1水準)、64KB RAM,RS-232C,FDD I/F内蔵。PC-8001 + FGU-8200 + JWP-8200の組み合わせで、漢字ROMを搭載したPC-8001mkIIとほぼ同スペックになる。ワープロソフト付属。基本はFGU-8000もしくはFGU-8200と組み合わせてワープロとして使用。CP/Mも動作可。
- GSX8800 サウンドボード:HAL研究所より発売。AY-3-8910×2搭載で6重和音が再生可能。PC-8001に接続する際はタッチアップキットGSX8810が必要。
- アドコムサウンドユニット:アドコム電子より発売。CPUに下駄を履かせる形でSN76489を取り付け。基本3音、6音に拡張可。
- ADC-32KR 32KB RAM + FD I/O PORT:秀和システムトレーディングより発売。増設32KB RAMとFDD I/Fを単一ユニットにしたもの。32KB RAMのPC-8001とFDDを接続することでCP/Mが動く最小構成となる。
- PSA PCG8100互換のユーザ定義キャラクタジェネレータ:工学社から組み立て用基板が発売。完成品の販売は無い。
PC-8001の特徴等
メモリは発売当初は16KBと少なめ、後に32KBに増強されており、発売済みのマシンでも専用スロットがあり、搭載することは簡単にできるようになっており、拡張ボックスを購入して最大64KBまで搭載できた。
なお、ROM-BASICとしてN-BASICが搭載されていた。拡張ボックスを購入し最大までメモリを増設しフロッピーを使えばOSとしてDISK-BASIC、CP/Mが稼働できた。
グラフィックスはグラフィックRAMを持たないため、テキスト画面を利用して簡易表示させ、160×100ドットで8色表示、となっていた。後に、サードパーティから16KBのグラフィックRAMが発売され、これを使えば320×200ドットで4色表示可能となる。これが、PC-8001MKIIのグラフィック機能の原型である。
まだ漢字表示はなかったが、それを除けば自社・サードパーティから多数の機器やソフトが発売されている。但し当時はソフトはまだゲームが主体になっていたことはいうまでもない。このマシンが爆発的に売れたことが、後にPC-9800シリーズがベストセラーになることへ繋がっていく。
競合機種としては、国産パソコン第1号の日立ベーシックマスター(1978年10月発売)、富士通FM-8(1981年)といったところだった。
1982年に富士通がFM-8を大幅にモデルチェンジし、価格も10万円近く引き下げたFM-7を発売すると、PC-8801を大幅に価格引き下げしたマシンを想像して、またNECの勝ちか…と思ったユーザーも中にはいたが、その予想は外れて、PC-8001MKIIの登場となった。
因みに、PC-8801を大幅に値下げしたマシンの登場はPC-8001MKII発売3年後のPC-8801MKIIFRである。
寸評:NECにパソコンシェアNO.1をもたらせてくれた栄光のマシン
メモ
ソフト、ハードともサードパーティから多数発売されたが、1981年11月に上位機PC-8801と下位機PC-6001が発売されると、本機は板挟みになり存在感を示せなくなった。