PC-8001MKII 買うと後悔して上位機に買い換えるしかなくなる

ソフトウェアとハードウェアは車の両輪のようなもので、コンピュータはソフトがなければただの箱、というのは昔から変わらない。PC-8001MKIIは発売当初こそバックオーダーを抱えるほど人気があったとされるが、PC-6001MKIIとPC-6601が登場して以降は、PC-8001MKIIの立場は微妙なものとなり、PC-8801MKIIが登場後は、オールラウンドでは苦しくなった。

PC-8801MKIIにはN-BASICモードもあるし、強力なN88-BASICを搭載、さらにディスク内蔵可能、PC-8001MKIIは漢字ROMオプションだが、PC-8801MKIIは標準装備。本体価格はmodel10なら45,000円程しか違わない。PC-8001MKIIに漢字ROMを搭載するとさらに価格差は縮まってmodel10とは13,000円しか違わなくなる。さらにFDDを購入するとPC-8801MKIIよりも2万円以上も高くなってしまうということになっているからである。

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ソフト数千、高感度パソコンは大嘘

PC-8001MKIIカタログその2

昔からメーカー純正品よりもサードパーティーの製品の方が安い、というのは変わらないものだが、フロッピードライブやプリンタ、ディスプレイなどは他社からもいろいろ発売されていたし、拡張スロット用のPSGサウンドボードも発売された。さらにグラフィックスの命令を拡張したROMやマシン語モニタを収めたROM発売され、空きROMスペースへ組み込めるようにしてあった。しかし、いくら周辺機器を整えても、ソフトがなければ使いようはない。

カタログでは豊富に揃っているはずのソフトはまずショップにはない。当時NEC8ビットパソコン用のソフトは6000/6600/8800用は店頭に並んでいても8000用のソフトはゲームさえもないのだ。

因みに、筆者が秋葉原のBit-INNでやっと見つけることができたPC-8001MKII用のソフトウェアは、NHKマイコン講座のプログラム集(1983年放映)のカセットテープ版だった。それ以外の市販ソフトはおいていなかった。NECのショールームでさえ、こんな状況だったのだ。

NECはPC-8001MKIIには何も期待していなかった?

雑誌記事では大半の記事は上位のPC-8801/9801の記事か(N88-BASIC)、下位のPC-6000/6601用が圧倒的に多かった。その中で数少ない特化記事として代表的なのは「PC-8001MKII機能拡張シリーズ」が挙げられるだろう。

機種に特化しない記事であれば、Oh!PCではBASICの入門講座、ハードウェア工作記事(拡張スロットを利用する)等があり、後者はPC- 6001/6601/8001/8801/9801とすべてのシリーズが網羅されていた。

一応は本格的パソコンの入口であるはずのPC-8001MKIIだったが、月刊マイコン等ではBASICで作ったゲームソフトが掲載されていたし、通販でプログラムテープを買うこともできた。とはいえ、これは前のモデルであるPC-8001用のN-BASICのものだった。勿論MKIIだから、互換性はあるが、N80-BASICで作ったソフトが掲載されることはなかった。

しかし、このクラスのパソコンを単なるゲーム用に買う人は少ないはずで、そのギャップが気になる。NECもこのパソコンが本格的利用されることは期待していなかったらしい。ゲームならゲーム、ビジネスならビジネスと割り切った設計にするべきで、中途半端な設計では使い込みようはない。

同価格帯のマシンではグラフィックスは640×200ドット時8色表示、PSGサウンド3重和音、というのが標準的だったが、PC-8001MKIIでは320×200ドットで4色表示、4色表示は融通の利かない3色固定モード(黒・赤・緑モードか、青・紫・水色のモードのいずれか選択。これに任意の1色を選択)。さらにサウンドは貧弱なBEEP音のみというどうしようもない設計だった。

この価格帯でこの性能なら、富士通のFM-7の方を選ぶ方が個人用途には向いているし、値段とのバランスがとれていた。

やはり初代PC-8001の後継機種はPC-8801MKIIの方で、PC-8001MKIIは似非にせの後継機種だったと考えるものである。

下位機種にも負けていたPC-8001MKII

320×200ドット時4色表示カラーは下位機種のPC-6001MKII/PC-6601にもある。漢字表示は教育用漢字を含む1024文字とはいえ標準装備(JIS第一水準漢字はオプション)。サウンド機能はPSGサウンドを搭載し、ボイスシンセサイザーも搭載済み。メインメモリは64KB搭載。これらを考えると、PC-8001MKIIは下位機種にも負けていたといってよいと思うのだが、どうだろう。

いずれにしても、ソフトはない、将来の発展性もないこのPC-8001MKIIでは、上位機にしておけば良かったと後悔するのは目に見えている。結局買い換えるしかなくなるのだった。

教訓:ソフトがなければただの箱

メモ

NECの8ビット機の中では、もっとも存在理由がなくなりつつあったのがこのPC-8001MKIIであった。下位機種であるはずのPC-6001MKII/PC-6601にも性能面で著しく見劣りした。上位のPC-8801MKIIの方が性能は格段上であるし、そんなに価格差が開いているわけでもなく、PC-8001MKIIを買うと特にFDDがほしくなったときに後悔する仕掛けになっているという人までいた。PC-8801MKIIが登場した時、本機の役目は終わったと見ていいようだ。

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