カタログコピー「クラスで一番、オール5パソコン。」
本体性能面で他社機種に大きく水をあけられる結果になったPC-8001MKIIは、1985年1月にPC-8001MKIISRとしてモデルチェンジされた。モデルチェンジの目玉はグラフィックスとFM音源の搭載だった。
グラフィックスは640×200ドット時1画面8色表示、320×200ドット時は8色表示で2画面優先順位付け、そしてサウンドはFM音源となっている。
一部のマニアの間では生まれるのが2年遅かった、とかPC-8001最後の悪あがきなどといわれることがあった。何のためのラインナップだったのか、疑問符がつくマシンだった。
PC-8001MKIISRのスペック

- メインCPU
μPD780C-1(Z-80Aコンパチ、4MHz) - ROM
N80SR-BASICおよびモニタ 40KB
N80-BASICおよびモニタ 32KB
(このうち24KBはN-BASICと共通)
本体内増設可能(N、N80-BASICモードで使用可) 8KB
キャラクタジェネレータROM 4KB - メインRAM
64KB
スロット内増設可能(機械語にて使用)最大32KB×4バンク - VRAM
48KB - テキスト表示
■N80SR-BASIC動作時
80文字×25行、80文字×20行
40文字×25行、40文字×20行
※上記のいずれかを選択、カナ文字、ひらがな文字選択可
■N80-BASIC、N-BASIC動作時
80文字×25行、80文字×20行、72文字×25行
72文字×20行、40文字×25行、40文字×20行
36文字×25行、36文字×20行
※上記のいずれかを選択
■N80SR-BASICモード、N80-BASIC、N-BASICいずれもキャラクタ単位にアトリビュート設定可。リバース、ブリンク、シークレット、カラー8色(黒、青、赤、マゼンタ、緑、シアン、黄、白) - カラーグラフィックス
■N80SR-BASIC動作時
640×200ドット1画面
320×200ドット2画面※表示優先順位付合成可
カラー8色(黒、青、赤、マゼンタ、緑、シアン、黄、白)
■N80-BASIC動作時
640×200ドット2色
320×200ドット4色カラー(黒・赤・緑の組み合わせと任意の1色)
320×200ドット4色カラー(青・紫・水色の組み合わせと任意の1色)
640×200ドットアトリビュートカラー8色
※アトリビュートカラーは文字単位の色付け
※上記のうち1画面を選択
■N-BASICモード時
160×100ドット8色(テキストの簡易グラフィックモード使用)。 - モノクログラフィックス
■N80SR-BASIC動作時
640×200ドット3画面(アトリビュートカラーモード)
320×200ドット6画面(アトリビュートカラーモード)
※上記のいずれかを選択
■N80-BASIC動作時
640×200ドット1画面(モノクロモード)
640×200ドット1画面(アトリビュートカラーモード)
※上記のいずれかを選択
※アトリビュートカラーでは、テキスト表示画面の制御によりキャラクタ単位にカラー8色指定可 - 画面合成
可(カラーグラフィック、テキスト合成) - バックグラウンドカラー
8色指定可 - 漢字表示
オプションで漢字ROMボードPC-8001MKII-01が用意されている。
文字構成:16×16ドット
文字種類:JIS第一水準漢字(2965字)+非漢字(885種)
画面構成:40文字×10行
※グラフィックス画面に表示
非公認だが初代PC-8801用の漢字ROMボードも使用可 - ビデオ出力
RGBセパレート出力方式(TTL、カラー)
コンポジットビデオ出力方式(輝度変調、モノクロ)
家庭用TV(TVアダプタ経由)に接続可 - オーディオ出力
FM音源3和音(各音ごとに49種の音色指定可)
SSG音源3和音(GI社PSGコンパチブル)
スピーカー内蔵、LINE OUT端子付 - キーボード
JIS標準配列:本体一体型。テンキー、コントロールキー、5ファンクションキー、キャピタルロック可、HELPキー、COPYキー。 - シリアルI/F
RS-232C準拠。75~9600ボー - プリンタI/F
セントロニクス社仕様準拠 - FDD I/F
内蔵。PC-8031シリーズ(2D)相当品接続可 - 8インチFDD I/F
本体内スロットに内蔵可(ディスクユニットに添付) - カセットI/F
600ボー。1200ボー隠し設定 - 汎用I/O
PC-8801MKII/SRのキーボードや専用のジョイスティックを接続可 - ライトペン
PC-8045使用可(モノクロディスプレイ端子に接続) - 拡張スロット
1スロット内蔵(PC-8012バス上位コンパチブル) - カレンダ時計
電池によるバックアップ(月、日、時、分、秒) - 電源
AC100V±10% 50/60Hz - 温湿度条件
0~35℃、20~80%RH(ただし結露しないこと) - 外形寸法
440(W)×295(D)×85(H)㎜ - 重量
3kg - 主な添付品
デモンストレーションプログラムテープ、N80SR-拡張BASICテープ、カセットケーブル、モノクロディスプレイケーブル、ユーザーズマニュアル、N80SR-BASICリファレンスマニュアル、N80SR-BASICリファレンスブック、保証書、ユーザー登録カード他 - 発売年月
1985/2 - 本体標準価格
108,000円
ゲームの作りやすいマシンになったが…
上位機種のPC-8801MKIISRとの外見上の違いは本体一体型、ディスクドライブは外付け、というところだ。デザインは一体型で丸みを帯びており、カラーリングは旧型機と変わってブラウンとベージュの明るいものになった。キーボードはリターンキーが小さかったり、カーソルキーがシフトキーと一緒に押さないと使えなかったり、このあたりは何も良くなっていない。
旧型のPC-8001MKIIでは低速で貧弱だったグラフィックスはALUとサイクルスチールを採用しかなり改善されており、8ビット機としては最上位にランクできる。グラフィックス画面とテキスト画面は優先順位設定可、320×200ドット時2画面8色表示時優先順位可、等PC-8801にはないモードがあり、ゲームを作りやすい部分もあった。このモードを生かしたゲームソフトもごく少数だが開発されたという(実際にはパソコンショップの店頭で売っているのを見たことがない)。
付属のN80SR-拡張BASICテープを読み込ませれば、COPY(画面のハードコピー)、PAINT(タイリングペイント)、ROLL(グラフィック画面の4方向スクロール)が使用できる。これはN80SR-DISK-BASICでは実装されている。
本来漢字ROMは標準装備とするべきだが、本機では残念ながらオプションで値段も高い(3万円)。
拡張スロットは1個に削減。漢字ROM専用スロットは、電源下からキーボード下へ移動し、非公認だがPC-8001mkII用だけでなく初代PC-8801用漢字ROMが使用可能となっている。
もう一つのキャッチコピーは「SOUND & GRAPHICS」で、これは1983年発売の東芝「パソピア7」そのもの。カタログの作り方も「君(きみ)」の単語が多く使われ、まるでそっくりだったのが印象にある。パソピア7同様に、PC-8001MKIISRも中高生が販売対象とみていたのが分かる。
最終的に投げ売り処分に…
モデルチェンジで機能が強化され、カタログではお買い得なはずなのだが、やはりお勧めできないマシンである。その理由はPC-8001MKIISRにFDDを購入すると上位機のPC-8801MKIISRが258,000円なのに対し、PC-8001MK2SR+FDDで291,000円(FDDを利用するには接続ケーブルとシステムディスクも必要)とPC-8801MK2SRよりも高くなってしまうということだ。
このパソコンに漢字ROMを搭載しFDDを接続するだけの価値はない。ソフトウェアの充実度もNECのパソコンの中では最悪の部類になる。パソコンショップに行ってもソフトは全くない。ゲームソフトさえもないのだ。
1985年10月頃には家電量販店や秋葉原では格安で投げ売り処分となっていた状況だった。投げ売り処分となるのはなるだけの理由がある訳で、このパソコンは絶対に買ってはいけないというのが結論だ。もっとも、1985/8頃には生産が打ち切られており、後は正式にカタログ落ちするのを待つだけとなっていた。
寸評:今さら80をどうするのか
メモ
4つのSRのラインナップにPC-8000シリーズの後継機種は必要なかったといえる。性能がPC-8801MKIISRと被ってしまっており、特徴を出せずに売れなかったというショップが多かったという。結果的に、他社製品ではなく、自社製品に完敗して消えていくという運命をたどったマシンだった。