PC-8801はPC-8001の上位機で、当初は8ビットビジネスパソコンとして1981年に発売。PC-8800シリーズでは本体とキーボードが別になっていて、カールケーブルで繋いでいる。そのため本体上にディスプレイを載せられるので、PC-8001よりもずっと省スペースにできる。
発売期間は1981年12月から1983年10月までで、以降はPC-8801MK2にモデルチェンジされた。このため、PC-8001MK2(1983年1月発売)とはだぶる期間が10ヶ月ほどある。
ROMには、PC-8801用として、新たにN88-BASICが搭載された。同時に発売されたPC-6001があり、BASICの方言が3種もできてしまったことになった(N,N66,N88という具合)。
PC-8801スペック
- CPU
μPD780C-1(Z-80Aコンパチ)を4MHzで稼働 - ROM
N-BASIC及びモニタ32KB,N-88BASIC40KB。
スロット内増設可能(7バンク×8KB) - メインRAM
64KB - メインRAM増設
拡張スロット内に32KB単位で可能(バンク切り換え方式) - VRAM
48KB - テキスト表示
80文字×25行、80文字×20行、40文字×25行、40文字×20行※いずれかを選択可
文字及びグラフィック記号(248種)
キャラクタ単位にアトリビュート設定可。リバース、ブリンク、シークレット、カラー8色(黒、青、赤、マゼンタ、緑、シアン、黄、白)。 - カラーグラフィックス表示
640×200ドット1画面8色表示(黒、青、赤、マゼンタ、緑、シアン、黄、白) - モノクログラフィックス表示
640×400ドット1画面(専用高解像度ディスプレイ使用時)
640×200ドット3画面
※いずれかの画面を選択 - 画面合成
可(グラフィックス画面にテキスト画面の上が来る) - バックグラウンドカラー
8色表示可(専用高解像度ディスプレイ使用時) - ボーダーカラー
8色表示可(専用高解像度ディスプレイ使用時を除く) - CRT
R.G.B.セパレート出力方式(カラー)
コンポジットビデオ信号出力方式(輝度変調、モノクロ)
家庭用TV(TVアダプタ経由)に接続可 - 漢字表示
オプション、PC-8801-10(JIS第一水準漢字ROMボード)を本体内専用スロットに実装
文字構成:16×16ドット
文字種類:JIS第一水準漢字2965種,非漢字約700種
※グラフィックス画面に表示 - キーボード
(スカルプチャータイプ) JIS標準配列準拠、テンキー、コントロールキー、5ファンクションキー、キャピタルロック可、HELP、COPY、キー。
セパレートタイプ(本体とカールケーブルにより接続) - サウンド
オプション - FDD
5.25インチ2DのFDDインタフェース内蔵
8インチFDDは拡張スロットにインタフェースを内蔵可能 - プリンタI/F
パラレルI/F、セントロニクス社仕様準拠 - シリアルI/F
RS203C仕様準拠 - 拡張スロット
4個あり(PC-8012バス上位コンパチブル) - CMT(カセット)I/F
内蔵(300ボー/1200ボー切り換え式) - ライトペン接続
モノクロディスプレイ端子に接続可 - カレンダ時計
月、日、時、分、秒。NiCd電池でバックアップ - 電源
AC100V±10%、50/60Hz
消費電力
平均70W,最大141W - 使用条件
10~30℃,20~80%(但し結露しないこと) - 外寸法
本体:(W)496×(D)342×(H)107㎜
キーボード:(W)464×(D)214×(H)72㎜ - 重量
本体7.1kg
キーボード2kg - 主な添付品
キーボード、電源ケーブル、ユーザーズマニュアル、リファレンスマニュアル、お客様登録カード、保証書他 - 本体価格
228,000円 - 発売
1981年10月
グラフィックス画面とテキスト画面
テキスト画面は80×25行/80×20行/40×25行/40×20行の4つのモードがあり、切り換えて使うようになっている。
グラフィックス画面は640×200ドット8色表示が搭載された。この表示は、光の3原色である赤・青・緑の三色を使う方法であり、デジタルRGB出力を使っている。
640×400ドットは2色表示のモノクロ画面で、当時は高価だった専用のディスプレイが必要で、これは諦める人が多かったという。
グラフィックス画面とテキストが独立しており、画面合成表示できるが、常にテキスト画面の方が上に来るようになる。
PC-8801が究極の8ビット機といわれた理由
640×200ドットで8色表示は現在では物足りないが、当時も同じだった。色鉛筆なら最低でも12色、普通は24色セットある。そこで、登場したのがタイリングペイント/タイリングラインで、これは、ドットの目毎に配色して塗りつぶし、色を多く見せる方法だ。例えばオレンジ色に見せるには、黄色と赤を混ぜてやればいいわけで、ドット毎にタイル上に並べて、画面上はオレンジ色に見せることができる。配置の仕方によっては、単色に見せるのではなく、模様のように見せることもできる。
タイリングペイントやタイリングラインは現在では常識だが、当時としては非常に画期的で、その他ではシャープのX1シリーズにあった程度だった。
このように、PC-8801では、640×200ドット8色表示を生かすためのBASICの命令語が多く設定されたことが一時究極の8ビット機といわれた一つの理由になっているようだ。
PC-8001との互換性
PC-8801はN88-BASICと下位のPC-8001との互換性のためのN-BASICを搭載しており、当時多く市販されていたPC- 8001用のカセットテープのゲームもほとんどBASICだから、そのまま使うことができた。
CPUはZ80A相当品
CPUにはザイログ社のZ80A相当品が搭載されたが、何故かマシン語モニタはインテルの8080仕様だった。そのため、Oh!PCなどの雑誌では、Z80A仕様のマシン語モニタを動かすためのプログラムが頻繁に紹介されたが、作者によって使い勝手に差があった。
拡張スロット
PC-8001と共通のもので、各社からボードが発売されたが、スロットの仕様はすべて公開されており、自作用ボードも発売されていたし、また、雑誌などにもよく自作ボードの製作企画が連載された。
標準的なシステム
家庭用の簡易なシステムとしては、本体+RFコンバータを介して家庭用テレビに接続+データレコーダ(カセット)というものだ。ただメーカーとしては、家庭用テレビではなく専用のCRT使用を勧めていることはいうまでもない。標準的なシステムは、本体+専用CRT+プリンタ+5.25インチFDDで、これに漢字ROMを組み込んだもの。ビジネス用のシステムとしては、本体+640×400ドット対応CRT+プリンタ+8インチFDDに漢字ROMを組み込むといったところである。
競合機種や価格など
競合機種には富士通のFM-8や日立のベーシックマスターなどがある。当然、PC-8001からの買い換え需要も多かった。
価格は228,000円だったが、1983年7月頃には一部のディスカウント店で148,000円程度で買うことができた。1983年はPC-8001MKIIがでていて、PC-8801MKIIが登場するまでの間は6ヶ月ほど間があったとはいえ、PC-8001MKIIをやっと買えるという人ならもう少し我慢してお金を貯めればなんとか買えるわけだった。
寸評:8ビット機ユーザーの憧れマシン