PC-8801MKIIFR/MR登場から1年後、モデルチェンジが行われ、MH/FHが登場する。このシリーズから、MKIIで採用されたタートルグラフィックスや簡易ミュージック機能を廃止したため型番からMKIIの字がなくなった。
今回のモデルチェンジでは、正式に不人気のMKIITRを落としただけだが、それだけではモデルチェンジにならない。そこで、モデルチェンジの目玉としてCPUを倍速化している。また、キーボードが日本語表記になり、入門機という位置づけになっている。新たにイメージキャラとして、斉藤由紀が起用された。
PC-8801MH/FHスペック
- CPU
メインCPU:μPD70008AC-8(Z-80Hコンパチ、8/4MHz切り替え)
サブCPU:μPD780C-1(ディスクコントロール、4MHz) - ROM
メインROM:BASICおよびモニタ、他128KB
サブROM:ディスク・コントロール用:2KB - RAM
メインRAM:MHは192KB。FHは64KB。
※スロット内増設可能(32KB単位でバンク切り替え)
テキストエリア:32KB
変数・ワークエリア・テキストVRAM:31KB
VRAM:48KB
テキストVRAM:4KB(ハイスピードモード時のみ使用)
サブRAM:ディスク入出力用バッファ・ワークエリア 16KB - テキスト表示
80文字×25行、80文字×20行、40文字×25行、40文字×20行
※いずれかを選択可
文字及びグラフィック記号(248種)
キャラクタ単位にアトリビュート設定可。リバース、ブリンク、シークレット、カラー8色(デジタルRGBディスプレイ使用時)または512色中8色(アナログRGBディスプレイ使用時。N-88BASICのV2モードのみ可能) - カラーグラフィックス表示
640×200ドット1画面
512色中8色(アナログRGBディスプレイ使用時)※V2モード動作時
8色(デジタルRGBディスプレイ使用時)
※ドット単位に指定可 - モノクログラフィックス表示
640×400ドット1画面(専用高解像度ディスプレイ使用時)
640×200ドット3画面
※いずれかの画面を選択 - 画面合成
可(グラフィックス画面にテキスト画面の上が来る) - バックグラウンドカラー
512色中1色指定可(アナログRGBディスプレイ使用時)※V2モード動作時
8色中1色指定可(デジタルRGBディスプレイ使用時) - ビデオ出力
R.G.B セパレート出力方式(TTL、カラー)
アナログRGB出力(75Ωアナログ、カラー)
家庭用TV(別売TVアダプタ経由)に接続可 - 漢字表示標準装備
JIS第一水準漢字2965種,非漢字約700種
JIS第2水準漢字3,384字
画面構成:40文字×20行
文字構成:16×16ドット
※グラフィックス画面に表示 - キーボード
JIS標準配列テンキー、コントロールキー、10ファンクションキー、キャピタルロック可、HELPキー、COPYキー。セパレートタイプ(本体とカールケーブルにより接続) - FDD
MH:2HD/2DのFDDを2台内蔵
FH:2D(両面倍密度。320KB)仕様を内蔵可(最大2台)
FHmodel10のみ外付けFDD接続可。I/Fボード別売 - オーディオ出力
FM音源3和音(各音ごとに49種の音色指定可)/SSG音源3和音(GI社PSGコンパチブル)/スピーカー内蔵、LINE OUT端子付。
後日専用スロット搭載用サウンドボードⅡを発売。 - 拡張スロット
MHは2個。
FHは1個。
※PC-8012/13、PC-8801、PC-8001MKII上位コンパチブル。 - CMT(カセット)I/F
MHではオプション
FHにのみ標準搭載。300ボー/1200ボー切り換え式。 - カレンダ時計
月、日、時、分、秒。NiCd電池でバックアップ - 電源
AC100V±10%、50/60Hz - 消費電力
平均54W(model30)、最大90W - 使用条件
10~30℃,20~80%(但し結露しないこと) - 外寸法
本体:385(W)×343(D)×110(H)㎜
キーボード:462(W)×194.5(D)×33(H)㎜ - 重量
FHmodel30:9kg
MH:8.8kg
キーボード:1.5kg - 主な添付品
キーボード、電源ケーブル、ユーザーズマニュアル、リファレンスマニュアル、リファレンスブック、システムディスク、デモディスク、お客様登録カード、保証書他 - 発売
1986年11月
PC-8801MH/FHの変更点
デザインはFDD周りのダークブラウンがなくなり、ベージュ1色になり、すっきりまとまった。また、電源スイッチやリセットボタンにはパステルカラーが使われている。MHには「2HD」のオレンジ色のロゴが描かれている。
キーボードはファンクションキーが半分の大きさになり、個数は10個に増えた。スペースキーは3分割され、機能を割り当てられるようになっている。カーソル移動キーはテンキーの左側に移動してブラインドタッチがやりやすくなった。
本体前面にあったディプスイッチは廃止され、代わりにPCキーを押しながら電源を入れると設定画面が現れるように改善されたので、初心者にも親切な設計となった。現在のPCのBIOS設定画面のようなものだ。
また、前機種までは何故か本体後ろにあり、大きさも小さめで、何とも使いづらかったFM音源ボリュームは前面に移動し、スライド式になり使いやすくなった。合わせて、ヘッドホン端子も前面に新設された。
PC-8801MH/FHラインナップ

PC-8801FHブラックカラーカタログより
FHモデルには、シャープのX1を意識したのか、ブラックカラーのモデルも用意された。
- PC-8801MH
2HDのFDD2台内蔵
208,000円 - PC-8801FHmodel10
2DのFDD2台内蔵可
98,000円 - PC-8801FHmodel20
2DのFDD1台内蔵138,000円 - PC-8801FHmodel30B
168,000円
※model30のブラックカラーモデル - PC-8801FH-FD1 model10/20専用増設FDD。 35,000円
- PC-8853FH-2W N88-日本語BASICシステムディスク。9,000円:FH用。媒体は5インチ2D。model20/30には標準添付。
※FDDオプションモデルは今回で最後になり、以降はFDD内蔵モデルのみの発売となります。
AV機能向けオプション
今回はAV機能強化、ということで、幾つかオプションが発売された。これは、MKIISR以降の機種であれば利用できるものだが、CPU能力を考えるとやはり、MH/FH以降の機種でないと厳しいだろう。
■PC-8801-17 ビデオアートボード 49,800円
320×200ドット65,536色表示を可能にするボード。表示画像はそのままVTRに録画可能。ビデオ入力画面とスーパーインポーズが可能で、ビデオやテレビ画面とビデオアートボードの画面を合成したりテロップを流したり録画したりできる。表示には15KHz対応アナログディスプレイが必要。本体のテキスト表示、グラフィック表示との合成出力は不可能。128KB増設RAMとしても使用可能。拡張スロットに実装。
■PC-8801-18 ビデオデジタイズユニット 89,800円
ビデオアートボード専用デジタイズユニット。PC-8801-17に接続。
■PC-8801-20 マルチボードA 40,000円
第二水準漢字ROM、128KB増設RAMと、パラレル(PC-80S31用)I/Fの複合ボード。4MHz機(MK2FR/MR以前の機種)専用。 内蔵ディスクシステムを切り離せない機種では、PC-80S31用I/Fとしては使用不可能。MRでは第二水準漢字ROMは使用不可能。拡張スロットに実装。
■PC-8801-22 マルチボードB 22,000円
128KB増設RAMと、パラレル(PC-80S31用)I/Fの複合ボード。内蔵ディスクシステムを切り離せない機種では、PC-80S31用I/Fとしては使用不可能。拡張スロットに実装。
このパソコンを検討する人はシャープのX1ターボZと富士通のFM77AV40が比較対象となるだろう。価格やすべての機能が詰め込まれているという点ではX1ターボZといきたいところだが、CPU速度の他、バックアップするサードパーティの数ではPC-8801MHの方に軍配が上がる。FHの方はディスク容量からいってもホビー色の強いマシンと割り切るべきで、価格もMHより4万円安いだけだ。
この頃から8ビット機ではPC-8801が一人勝ちになった感もあった。
寸評:高速CPUをどう生かすか