「記念すべき、高性能であります。」
PC-8801MKIISRが登場してまだ1年も経たない1985年11月にはFRとMRというマシンが出てきた。
基本的には、SRの機能のうち、拡張スロットを減らし(FRは1個、MRは2個搭載)、またカスタムLSIにできるところは全てカスタムLSI化し、コスト削減を図っている。FRではモノクロディスプレイ端子が廃止された。MRではカセットI/Fも廃止されている。SRmodel10とFRmodel10を比較するとなんと7万円もコストダウンしている。
事実上NECの8ビット機全体のモデルチェンジであり、PC-6000/6600/8000に引導を渡したマシンでもあった。実際に、FRmodel10はPC-8001MKIISRよりも1万円安くなっている。
新たにFRやMRを購入する人もいるが、PC-6000/6600/8000からの買い換え需要も決して少なくなく、4つのSRが出揃ってから僅か10ヶ月でNECの8ビット機全体がPC-8801の低価格機に置き換えられたのには驚く。なお、イメージキャラには1986/3まで武田鉄矢が起用されたが、その後はイメージキャラはなくなった。
PC-8801MKIIFR/MRスペック
- CPU
メインCPU:μPD780C-1(Z-80Aコンパチ、4MHz)
サブCPU:μPD780C-1(ディスクコントロール、4MHz) - ROM
メインROM:N-BASICおよびモニタ 32KB、N88-BASIC 64KB
サブROM:ディスク・コントロール用:2KB - RAM
メインRAM:FRは64KB。MRは192KB。
※スロット内増設可能(32KB単位でバンク切り替え)
テキストエリア:32KB
変数・ワークエリア・テキストVRAM:31KB
VRAM:48KB
テキストVRAM:4KB(ハイスピードモード時のみ使用)
サブRAM:ディスク入出力用バッファ・ワークエリア 16KB - テキスト表示
80文字×25行、80文字×20行、40文字×25行、40文字×20行
※いずれかを選択可
文字及びグラフィック記号(248種)
キャラクタ単位にアトリビュート設定可。リバース、ブリンク、シークレット、カラー8色(黒、青、赤、マゼンタ、緑、シアン、黄、白)。 - カラーグラフィックス表示
640×200ドット1画面
512色中8色(アナログRGBディスプレイ使用時)※V2モード動作時
8色(デジタルRGBディスプレイ使用時)
※ドット単位に指定可 - モノクログラフィックス表示
640×400ドット1画面(専用高解像度ディスプレイ使用時)
640×200ドット3画面
※いずれかの画面を選択 - 画面合成
可(グラフィックス画面にテキスト画面の上が来る) - バックグラウンドカラー
512色中1色指定可(アナログRGBディスプレイ使用時)※V2モード動作時
8色中1色指定可(デジタルRGBディスプレイ使用時) - 漢字表示標準装備
JIS第一水準漢字2965種,非漢字約700種
JIS第2水準漢字3,384字※MRは標準搭載。FRはオプション
画面構成:40文字×20行
文字構成:16×16ドット
※グラフィックス画面に表示 - CRT
RGBセパレート出力(TTLインタフェース、カラー)
アナログRGB出力(75Ωアナログインタフェース、カラー)
家庭用TVに接続可(TVアダプタ経由またはアナログRGBインタフェース) - キーボード
(スカルプチャータイプ) JIS標準配列準拠、テンキー、コントロールキー、5ファンクションキー、キャピタルロック可、HELP、COPY、キー。
セパレートタイプ(本体とカールケーブルにより接続) - サウンド
FM音源3和音(各音ごとに49種の音色指定可)
SSG音源3和音(GI社PSGコンパチブル)
スピーカー内蔵、LINE OUT端子付 - FDD
FR:2D(両面倍密度。320KB)仕様を内蔵可(最大2台)
MR:2HD/2DのFDDを2台内蔵 - プリンタI/F
パラレルI/F、セントロニクス社仕様準拠 - シリアルI/F
RS203C仕様準拠。割り込み/ポーリング制御可 - 汎用I/O
入力4ビット、出力1ビット、入出力2ビット。アタリ規格のジョイスティック接続可。 - 拡張スロット
FRは1個。
MRは2個。
※PC-8012/13、PC-8801、PC-8001MKII上位コンパチブル。 - CMT(カセット)I/F
FRにのみ標準搭載。300ボー/1200ボー切り換え式。
MRではオプション - カレンダ時計
月、日、時、分、秒。NiCd電池でバックアップ - 電源
AC100V±10%、50/60Hz - 消費電力
平均54W(model30)、最大90W - 使用条件
10~30℃,20~80%(但し結露しないこと) - 外寸法
本体:350(W)×345(D)×125(H)㎜
キーボード:412(W)×195(D)×32(H)㎜ - 重量
FRmodel30:8.5kg
MR:8.8kg
キーボード:1.4kg - 主な添付品
キーボード、電源ケーブル、ユーザーズマニュアル、リファレンスマニュアル、リファレンスブック、システムディスク、デモディスク、お客様登録カード、保証書他 - 発売
1985年11月
MRでは内蔵FDDが2HDと2D両用となっており、PC-9801と併用するのにはさほど困ることもないだろう。なお、MRで書き込んだ2DのFDはFR等の2DのFDDでは読み込めない場合がある(NECも保証していない)。
MRではメインメモリが3倍増量された198KBとなっており、バンク切り替え方式で使用する。また、MRではJIS第二水準漢字が新たに標準装備され、その後の標準となった。
PC-8801MKIIFR/MRラインナップ
- PC-8801MKIIFRmodel10
2DのFDD2台内蔵可
99,800円 - PC-8801MKIIFRmodel20
2DのFDD1台内蔵(最大2台)
148,000円 - PC-8801MKIIFRmodel30
2DのFDD3台内蔵
178,000円 - PC-8801MKIIMR
2HD/2DのFDD2台搭載
238,000円 - 増設用FDD:PC-8801FR-FD1
FR本体(model10・model20)の増設用。
40,000円。 - システムディスク:PC-8834FR-2W(K)
FR用のN88-日本語BASICシステムディスク。model20・30には添付。
10,000円 - PC-8801-21:MR以降用のCMTインタフェースボード。FHを除く8MHz機用。4MHz時のみ使用可能。拡張スロットに実装。
11,000円
NECの8ビット機はPC-8800シリーズに一本化
内部の部品点数も大幅に減り、カスタム化できるところはすべてカスタム化されている。ケースデザインはmkIISRと全く同じで、FDD周りのパネルの色だけコーヒーブラウン色になっただけだ。ロゴマークを隠してしまったら全く区別できない。このケースデザインの共通化もコストダウンに相当強力に働いたようだ。
これらのラインナップを見ると、単なるPC-8801MKIISRのモデルチェンジではなく、NECの8ビット機全体の見直しで、工場の生産ラインを統一することでコスト削減した、ということだろう。PC-6000/6600/8000は終了させる方針が採られ、NECの8ビット機は1985年11月でPC-8801に一本化された。
結果的に、4つのSR、ではなく4つのRシリーズ、PC-8801MKIISR/TR/FR/MRだったんだな…と納得してしまった。
その後の製品ラインを見ると、NECはホビーは88、ビジネスは98という考えで展開していた。とはいえ、ホビーマシンとしても16ビットのPC-9801を所有する個人が次第に増加しておりビジネスもホビーも98という時代へ進んでいた。
寸評:8ビット機終焉の予兆?