1987年3月に発売されたPC-88VAは、PC-8801のソフト互換を保ちつつ、16ビットマシンへ進化させたマシンだ。
VAは「ビジュアル・オーディオ」の意味がある。互換性は基本的にBASICレベルのソフトのみであり、機械語プログラムは動作しないものもある。また、拡張スロットがPC-9801と同じ形状のため、ここへ取り付けるボードは利用できない。
PC-88VAハードスペック
- CPU
μPD9002 (V30/μPD70008AC(Z80H)命令コンパチブル、V50カスタム品)を8MHzで駆動 - ROM
メインROM:480KB(VA)PC-Engine,N88-日本語BASIC V3 他
辞書ROM:288KB(約40,000語)(VA)
漢字ROM:288KB(JIS第1,第2水準漢字・非漢字他) - RAM
メインRAM:512KB最大640KByteまで増設可能。
システムRAM:8KB(VA)外字、変換学習用、バッテリバックアップ可
テキストRAM:64KBスプライトパターン領域兼用
グラフィックスRAM:256KB
サウンドRAM:なし(デジタルサンプリング用)※サウンドボード2により256KBに増設可 - テキスト表示
英数カナ(8×8,8×16ドット)、漢字(16×16ドット)
80文字×(25/20/12/10)行
40文字×(25/20/12/10)行
文字単位にカラー(4096色中16色)およびアトリビュート(リバース・ブリンク・シークレット・アンダーライン等)が指定可能
画面水平4分割、水平垂直スクロール(スムーズスクロール可能) - グラフィックス表示(19モードより選択)
640×400ドット4096色中1色表示8画面
640×400ドット4096色中16色表示2画面
640×400ドット4096色中32色表示1画面
640×400ドット256色表示1画面
640×200ドット4096色中1色表示16画面
640×200ドット4096色中16色表示4画面
640×200ドット4096色中32色表示4画面
640×200ドット256色表示2画面
640×200ドット65,536色表示1画面
340×400ドット4096色中1色表示16画面
340×400ドット4096色中16色表示4画面
340×400ドット4096色中32色表示2画面
340×400ドット256色表示2画面
340×400ドット65,536色表示1画面
340×200ドット4096色中1色表示32画面
340×200ドット4096色中16色表示8画面
340×200ドット4096色中32色表示4画面
340×200ドット256色表示4画面
340×200ドット65,536色表示2画面 - グラフィックス性能
画面水平3分割、水平垂直スクロール(スムーズスクロール・ラップアラウンドスクロール可)
独立2画面合成表示可能
グラフィック描画カスタムプロセッサ
任意図形の転送描画、直線描画、ペイント補助 - スプライト
カラースプライト:8×4~256×256ドットドットごとに4,096色中16色指定。モノクロスプライト 32×4~256×256ドットドットごとに4,096色中1色指定
カラースプライト、モノクロスプライト混在可能
最大32個表示可能、スプライト間の衝突検出機能あり - 画面表示
テキスト画面・スプライト画面・グラフィック画面2画面を優先順位付きで合成可能。透明色指定、画面マスク機能あり。 - FDD
5.25インチ2HD・2ドライブ内蔵(2D/2DDの読み書き可) - サウンド
FM音源6和音(ステレオ)・SSG音源3和音。ライン出力、ヘッドホン出力 - インタフェース
デジタルRGBディスプレイ
アナログRGBディスプレイ
ビデオコピー接続用
8ビットパラレルインターフェース(プリンタ接続用)
シリアル(RS-232Cに準拠、モデム、スキャナの接続用)
スキャナ専用パラレルインターフェース(スキャナ接続用)
ビデオ出力コンポジットビデオ(VTR等の接続用) - マウス
標準添付 - 拡張スロット
汎用3スロット(うち1スロットはメモリボードが使用)、ビデオボード用1スロット - 電源
AC100V±10%、50/60Hz - 消費電力
平均50W、最大80W - 使用条件
10~35℃、20~80%(ただし結露しないこと) - 外寸
本体:440(W)×345(D)×150(H)㎜
キーボード:462(W)×194.5(D)×33(H)㎜ - 重量
本体:11kg
キーボード:1.5kg - 主な附属品
マニュアル一式(PC-Engine,N88-日本語BASIC,他)
PC-Engine システムディスク
デモディスク(VA)
アニメフレーマー、ポップアップ電卓 - 発売
1987/2 - 標準価格
298,000円
PC-88VAの特徴
デザインは、電源スイッチやリセットスイッチはパステルカラーとしたり、本体カラーはアイボリー1色としたのは同じだ。FDDを縦にしたので、PC-8801MH/FHと異なり縦がその分高くなった。
機能を満たすために、従来のV2モードに加えて、PC-88VA専用に開発されたV3モードが搭載された。一方で、N-BASICについては削除された。なお、ディップスイッチで設定するのではなく、画面上で設定を行うのはPC-8801MH/FHと同じである。
PC-88VAではテキスト文字(英数)がPC-9801に近い8×16ドット表示となり、CRTCはPC-8801mkIISR以降とは異なるため、この機能を利用するゲーム関係ソフトが動作しないという憂き目に遭い、互換性が不十分なものとなった。
グラフィックスの機能はPC-9801よりも強力で、これを生かしたソフトとして、簡単な図形を組み合わせてアニメを作るアニメフレーマーがバンドルされた。
オプション
サウンド機能はFH/MHと同じだが、後にVA2同等にするためのサウンドボードⅡが発売された。
■PC-88VA-12 サウンドボードII 39,800円
PC-88VA2と同じサウンド機能を提供するボード。FM音源6和音(ステレオ)・SSG音源3和音・リズム音源6種類(ステレオ)サンプリングなしADPCM方式 4kHz/8kHz/16kHzオーディオ入出力。専用スロットに実装。
■PC-88VA-91 PC-88VAソフトウェアバージョンアップボード 49,800円
PC-88VA専用。OSを含むROM内蔵ソフトウェア群のアップグレード用ボード。拡張スロットに実装。
■PC-88VA-11 ビデオボード 39,800
ビデオデジタイズを可能にするボード。専用スロット(Vスロット)に実装。内部結線も必要。
X68000/PC-9801との競合関係
同じ頃シャープからライバルとなるX68000がアナウンスされていた時期でもあり、購入者を大いに迷わせることとなった。ゲームやグラフィックスに利用するならX68000の方が機能は強力だ。
また、自社製品であるPC-9801はビジネスソフトが膨大にあるだけでなく、ゲーム/ホビーソフトも相当充実している。PC-9801さえ買えば、ビジネスにもホビーにも使えるわけだから、結果的にPC-9801が競合製品となってしまった。
さらに、価格がPC-8801MHよりも10万円ほど高いということから、PC-88VAはさほど売れず、NECは再び8ビット機のPC-8801MA/FAを出してくることになる。
寸評:PC-9801と競合関係になる