PC-88VAのモデルチェンジ機として、1988年3月にVA2、6月にVA3が発売されたが、今回の目玉はX68000に対抗してサウンド機能の強化だった。PC-8801MAで採用されたリズム音源6音、ADPCM録音が標準搭載され、従来のPC-88VAでも同機能が使えるようにサウンドボードⅡが発売された。
イメージキャラには引き続き斉藤由紀が起用された。
PC-88VAハードスペック
- CPU
μPD9002 (V30/μPD70008AC(Z80H)命令コンパチブル、V50カスタム品)を8MHzで駆動 - 数値演算プロセッサ
オプション - ROM
メインROM:480KB(VA)PC-Engine,N88-日本語BASIC V3 他
辞書ROM:288KB(約40,000語)(VA)
漢字ROM:288KB(JIS第1,第2水準漢字・非漢字他) - RAM
メインROM:480KB(VA)PC-Engine,N88-日本語BASIC V3 他
辞書ROM:288KB(約40000語)(VA)
漢字ROM:288KB(JIS第1,第2水準漢字・非漢字)
メインRAM:512KB最大640KByteまで増設可能。
システムRAM:8KB(VA)外字、変換学習用、バッテリバックアップ可
テキストRAM:64KBスプライトパターン領域兼用
グラフィックスRAM:256KB
サウンドRAM:256KByte(デジタルサンプリング用) - テキスト表示
英数カナ(8×8,8×16ドット)、漢字(16×16ドット)
80文字×(25/20/12/10)行
40文字×(25/20/12/10)行
文字単位にカラー(4096色中16色)およびアトリビュート(リバース・ブリンク・シークレット・アンダーライン等)が指定可能
画面水平4分割、水平垂直スクロール(スムーズスクロール可能) - グラフィックス表示(19モードより選択)
640×400ドット4096色中1色表示8画面
640×400ドット4096色中16色表示2画面
640×400ドット4096色中32色表示1画面
640×400ドット256色表示1画面
640×200ドット4096色中1色表示16画面
640×200ドット4096色中16色表示4画面
640×200ドット4096色中32色表示4画面
640×200ドット256色表示2画面
640×200ドット65,536色表示1画面
340×400ドット4096色中1色表示16画面
340×400ドット4096色中16色表示4画面
340×400ドット4096色中32色表示2画面
340×400ドット256色表示2画面
340×400ドット65,536色表示1画面
340×200ドット4096色中1色表示32画面
340×200ドット4096色中16色表示8画面
340×200ドット4096色中32色表示4画面
340×200ドット256色表示4画面
340×200ドット65,536色表示2画面 - グラフィックス性能
画面水平3分割、水平垂直スクロール(スムーズスクロール・ラップアラウンドスクロール可)
独立2画面合成表示可能
グラフィック描画カスタムプロセッサ
任意図形の転送描画、直線描画、ペイント補助 - スプライト
カラースプライト:8×4~256×256ドットドットごとに4,096色中16色指定。モノクロスプライト 32×4~256×256ドットドットごとに4,096色中1色指定
カラースプライト、モノクロスプライト混在可能
最大32個表示可能、スプライト間の衝突検出機能あり - 画面表示
テキスト画面・スプライト画面・グラフィック画面2画面を優先順位付きで合成可能。透明色指定、画面マスク機能あり。 - FDD
VA2/VA3両機種に5.25インチ2HD・2ドライブ内蔵(2D/2DDの読み書き可)
※VA3には3.5インチ2TDのFDDを1台内蔵済み - サウンド
FM音源6和音(ステレオ)・SSG音源3和音・リズム音源6種類(ステレオ)・サンプリングなしADPCM方式 4kHz/8kHz/16kHz。ライン出力、ヘッドホン出力 - インタフェース
デジタルRGBディスプレイ
アナログRGBディスプレイ
ビデオコピー接続用
8ビットパラレルインターフェース(プリンタ接続用)
シリアル(RS-232Cに準拠、モデム、スキャナの接続用)
スキャナ専用パラレルインターフェース(スキャナ接続用)
ビデオ出力コンポジットビデオ(VTR等の接続用) - マウス
標準添付 - 拡張スロット
汎用2スロット、ビデオボード用1スロット - 電源
AC100V±10%、50/60Hz - 消費電力
平均50W、最大80W - 使用条件
10~35℃、20~80%(ただし結露しないこと) - 外寸
本体:440(W)×345(D)×150(H)㎜
キーボード:462(W)×194.5(D)×33(H)㎜ - 重量
本体:10.2kg
キーボード:1.5kg - 主な附属品
マニュアル一式(PC-Engine,n88-日本語BASIC,他)
PC-Engine システムディスク
アニメフレーマー、ポップアップ電卓、NET-ACCESS体験版(VA2/3)
PC-88VA2/VA3ラインナップ
- PC-88VA2
1988/3発売
価格298,000円 - PC-88VA3
2TDのFD1台内蔵
1988/6発売
価格398,000円
2TDのフロッピーはデータ保存用に
VA3では2TDという規格の3.5インチFDDが1台搭載されたが、VA/VA2でもインタフェースボードと外付けFDDを取り付ければ使用できる。おそらく画像データを保存するためのものもので、当時まだMO等がなかったため採用されたのだろう。但し、2TDという規格のFDの不透明さとメディアの価格から普及せずに終わった。
■PC-88VA-22 30,000円
2TD(9.3MB)マイクロフロッピィディスクインタフェースボード
■PC-88T31 138,000円
2TDマイクロフロッピィディスクユニット。従来の3.5インチ2HD/2DDの読み込みが可能。PC-88VA-22経由で接続。 システムで最大2ドライブまで使用可能。ドライブ数は1基(1基増設可能)。
■PC-88T31-01 78,000円
増設用2TDマイクロフロッピィディスクドライブ。PC-88T31に実装。VA3には増設不可能。
ビデオデジタイズのためのボードは、拡張スロットに挿すだけでよくなり、内部結線は不要になった。
■PC-88VA-11K ビデオボード 39,800円
PC-88VA2/3でビデオデジタイズを可能にするボード。専用スロット(Vスロット)に実装。PC-88VAでは使用不可能。
僅か2年で幕引きとなりPC-98DOに引き継ぐ
PC-88VAにはシャープのX68000という強力なライバルがあり、ゲームユーザーは、68000系CPUを求めたという見方も多いが、筆者はNECの自社製品であるPC-9801自体が競合製品となってしまったことが大きかったと見ている。V1/V2モードでの互換性が不十分なこと、自社製品である8ビット機のPC-8801MAより10万円ほど高いという価格の問題もあり、思ったほど販売台数は伸びず、専用のソフトが出揃うこともなく、結局PC-88VAシリーズはこのVA2/VA3で終了となった。
このことから、NECはPC-9801にも低価格機を出してニーズに応えなければならなくなった。すでにそれについても認識していたようで、PC-9801UV11という低価格機を出してPC-8801には見切りをつける潮時と見たようだ。
結果的に、NEC としては、ホビーは88、ビジネスは98という目論見が外れたこととなる。その後PC-8801アーキテクチャはPC-98DOへと引き継がれた。
PC-9801ソフトを動かす試み
PC-88VAシリーズは名前は88とはいえ機能的には98に近く、98用のハードウェアやソフトウェアを88VA上で動かそうという試みが行われ、実際にソフトウェアでは一太郎やLotus1-2-3、ハードウェアではBMS、EMS、SCSIなどを動作させた強者ユーザーもいる。PC-VANではそのためのパッチが配布され、一定の動作環境が実現していた。
寸評:PC-9801に後を譲ることとなったマシン