「高速32ビットCPUでパワー増強。実力の3.5インチデスクトップ98。」
PC-9801ESは386SX搭載機種で、E型番はおそらくエントリーという意味だろうが、過去に使っていた型番を再度使用するというのも不思議だ。Sは386SXから採ったか、若しくはスタンダードの意味だろう。
386DXが外部バス32ビットなのに対し、386SXは外部バス16ビットなので、完全な32ビットCPUとは言えないが、搭載するには286マシンを少し手直しするだけでよいので、日本では非常に多く使われたCPUである。
PC-9801ES2スペック

- CPU
i386SX 16MHz
V30 8MHz
※切り替えて使用。 - コプロセッサ
i80387
※i80386稼働時のみ使用可
i8087
※V30稼働時のみ使用可 - ROM:N88-BASIC(86)及びモニタ96KB。
- メインRAM
1.6MB。最大10.6MBまで増設可能(本体内専用スロット3MB) - ビデオRAM
256KB。 - テキストRAM
12KB。 - テキスト表示
80文字×25行、80文字×20行 40文字×25行、40文字×20行
※上記のいずれかを選択可
文字及びグラフィック記号(248種)
キャラクタ単位にアトリビュート設定可。リバース、ブリンク、シークレット、カラー8色(黒、青、赤、マゼンタ、緑、シアン、黄、白) - カラーグラフィックス表示
640×400ドット2画面
640×200ドット4画面
※アナログRGB接続時4096色中16色表示
※デジタルRGB接続時8色表示 - モノクロディスプレイ接続時
640×400ドット4画面
640×200ドット16画面 - モノクログラフィックス表示
640×400ドット時8画面
640×200ドット時16画面 - 漢字表示標準搭載
文字構成:16×16ドットゴシック体
文字種類:JIS第1/第2水準、拡張、非漢字他約7,600文字
ユーザー定義文字機能188種。
388文字はオプション
画面構成:40文字×25行、40文字×20行
※グラフィックス/テキスト画面に表示可 - バックグラウンドカラー
8色指定可 - 画面合成
テキスト/グラフィックス画面の合成可(優先順位付け可) - バックグラウンドカラー
8色表示可(専用高解像度ディスプレイ使用時) - 内蔵FDD
3.5インチ2HD/2DD両用FDDを2台内蔵。 - 外付けFDD用I/F
2HDのFDD接続可 - HDD
内蔵可能 ※ES5は20MBHDDを内蔵済み(SASI) - キーボード
(スカルプチャータイプ) JIS標準配列準拠、テンキー、コントロールキー、15ファンクションキー、キャピタルロック可、HELP、COPY、BS、INS、DEL、XFER、NFERキー。
セパレートタイプ(本体とカールケーブルにより接続) - シリアルI/F
RS232C準拠 - プリンタI/F
セントロニクス社仕様準拠 - マウスI/F
バスマウス仕様 - CRT接続
アナログRGB、デジタルRGB、モノクロディスプレイ - サウンド
オプション - 拡張スロット
16ビットのCバス3個 - サービスコンセント
2個 - 電源
AC100V±10%、50/60Hz - 使用条件
10~30℃,20~80%(但し結露しないこと) - 外寸
本体 (W)380×(D)335×(H)128㎜。
キーボード (W)435×(D)180×(H)34㎜ - 重量
ES2:7.5kg。
ES5:8.8kg。
キーボード1.2kg。 - 主な添付品
キーボード、保証書、サービス網一覧表、お客様登録カード、グリーティングカード、ケーブルラベル、電源ケーブル、アース線 - 添付FD4枚
N88-日本語BASIC(86)Ver6.1関連(システムディスク、辞書ディスク1、辞書ディスク2、PCトレーニングディスク - 添付マニュアル
N88-日本語BASIC(86)Ver6.1関連3(ユーザーズマニュアル、リファレンスマニュアル、BASIC入門)、ガイドブック、日本語入力ガイド、ハードウェアマニュアル - 発売
1989/5
PC-9801ES2/ES5ラインナップ
- PC-9801ES2
3.5インチFDD×2台。
HDDなし(内蔵可)。
価格448,000円 - PC-9801ES5
3.5インチFDD×2台。
内蔵HDD40MB(SASI)。
価格638,000円
オプション
- PC-9801-26K:サウンドボード。FM音源3重和音/SSG音源3重和音の計6重和音8オクターブを実現するためのボード。スピーカー搭載、外部スピーカー端子付き、MSX規格のジョイスティックポート2個つき。ESの拡張スロットに実装。
ESでは何故かFM音源がオプションになっており、3.5インチFDD内蔵モデルは標準装備という原則の例外になっている。
EPSON互換機「PC-386M」の圧勝となったPC-9801ES
ESで採用されたi386SXは、内部処理は32ビットながらデータパスは16ビットなのでデータのオンオフは16ビットずつの2回となること(命令セットは同じ)、またアドレスパスは24ビットとなっており、i386DXが完全32ビットなのに比べると大幅に劣る。当時はMS-DOS全盛期であり、32ビットOSもなく、高速な16ビット機として使うのが普通だったから、386DX/386SXにこだわる必要はなかった。
5インチFDD搭載モデルに比べ、3.5インチFDDモデルは安い、というのが特徴だったが、半年後に登場するRA/RS/RXでこの原則が崩れている。RX21とEX2では1万円RX21の方が安く、またRS21とES2では5万円もRS21の方が安く設定された。
ESの価格は初代RA/RXに対して設定されていたので、RA/RS/RX三兄弟よりも高くなってしまった(実売価格は不明)。ESは価格設定も問題があったといえるだろう。
3.5インチFDDモデルはE型番になったが、その後再度U型番に戻るのも早かった。
寸評:CPUと価格のバランスがとれないマシン
結論
ESと同じ386SX 16MHzを採用し、FM音源標準装備のEPSON「PC-386M」は328,000円で、ESよりも12万円も安かった。PC-386Mは640KBだが、PC-9801ESは1MBのメモリを搭載している、という人もいるかもしれないが、当時1MBのRAMボードは数万円程度しかしなかった。PC-9801ESとPC-386Mは性能が同じであることを考えると、今回はEPSON互換機の圧勝だった。