「i486SX、ファイルスロット採用、これが次の主流を行くハイスタンダードマシン」
前年にDAが発売されて1年経たずで早くもモデルチェンジされてFAが登場した。これまでの例から、「DA21」というふうになるのではないかと予想されていたが、型番がFに変わった。Fの意味はファイルスロットの意味と考えている人が多いが、NECは「速さは力」とPRしていたので、案外ファースト(速い)の意味だったのかもしれない。F型番は以前にも使われていたのが再使用された。
前面パネルのデザインが少し変わった。FAで採用された486SXというのはなじみがないかもしれないが、486DXからコプロセッサ機能を省略したものだ。コプロセッサソケットにコプロセッサ487SXを挿入すると486SXは動作を停止し、487SXが動作する様になっている。487SXは中身は486DXそのもので、変種の486DXと考えると良い。
なお、FAは1992/1発売だが、FA2は1ヶ月遅れて1992/2発売。
PC-9801FAスペック
- CPU
FA:i486SX 16MHz
※V30エミュレーションモードあり。8MHz相当
※切り換えて稼働。 - コプロセッサ
使用可(487SX) - ROM
N88-BASIC(86)及びモニタ96KB。 - メインRAM
1.6MB。 - メインRAM増設
全機種とも14.6MBまで拡張可能。本体メモリ専用スロット12MB。 - ビデオRAM
256KB。 - テキストRAM
12KB。 - テキスト表示
英数カナ80文字×25行 / 80文字×20行 / 40文字×25行文字 / 40文字×20
行
※切り換えて使用。
文字及びグラフィック記号(248種)
文字単位にアトリビュート設定可。リバース、ブリンク、シークレット、8色表示カラー(黒、青、赤、マゼンタ、緑、シアン、黄、白)。 - カラーグラフィックス
640×400ドット2画面
640×200ドット4画面
※アナログRGB接続時4096色中16色
※デジタルRGB接続時8色表示 - モノクログラフィックス
640×400ドット4画面
640×200ドット16画面 - 漢字表示標準搭載
文字構成:16×16ドットゴシック体
文字種類:JIS第1、JIS第2、拡張、非漢字等約7,600種
ユーザー定義文字機能188種。
画面構成:40文字×25行、40文字×20行
※グラフィックス/テキスト画面に表示可 - 画面合成
テキスト/グラフィックス画面の合成可(優先順位付け可) - バックグラウンドカラー
8色表示可(専用高解像度ディスプレイ使用時) - 内蔵FDD
5.25インチ2HD/2DDのFDDを2台内蔵。
Uモデルは3.5インチ2HD/2DDのFDDを2台内蔵。 - HDD
内蔵可、SCSI I/Fが必要。※内蔵済みモデルあり - 外付けFDD用I/F
2HD - ファイルスロット
1個。SCSI仕様の機器を内蔵可。 - SCSI I/F
専用スロットに実装。内蔵HDD実装時及び、ファイルスロット対応機器実装時に必要(増設コネクタあり)
※HDD搭載済みモデルは標準搭載 - キーボード
(スカルプチャータイプ) JIS標準配列準拠、テンキー、コントロールキー、15ファンクションキー、キャピタルロック可、HELP、COPY、BS、INS、DEL、XFER、NFERキー。
セパレートタイプ(本体とカールケーブルにより接続) - シリアルI/F
RS232C準拠 - プリンタI/F
セントロニクス社仕様準拠 - マウスI/F
バスマウス対応 - CRT接続
アナログRGB、デジタルRGB、モノクロディスプレイ - サウンド
FM音源3重和音、PSG音源3重和音の計6重和音8オクターブ標準装備。外部オーディオ接続端子付き - 拡張スロット
16ビットのCバス4個 - サービスコンセント
2個 - 電源
AC100V±10%、50/60Hz - 使用条件
10~30℃,20~80%(但し結露しないこと) - 外寸
本体:(W)380×(D)335×(H)150㎜。
キーボード:439(W)×183(D)×31(H)㎜ - 重量
FA2:9.7kg
FA/U2:9.7kg
FA5:10.7kg
FA/U5:10kg
FA7:10.7kg
FA/U7:10.0kg
キーボード:約1.2kg - 主な添付品
グリーティングカード、キーボード、電源ケーブル、アース線、ケーブルラベル、保証書、お客様登録カ-ド、サービス網一覧表 - マニュアル
ガイドブック、N88ーBASICガイド - FD
98トレーニングディスク - 発売
1992年1月発売。FA2は1992年5月発売
デジタルRGB端子とモノクロディスプレイ端子は共用。486の速度は386と比べると約倍といわれているが、FAの処理速度は、DAと比べると体感は1.6倍程度だろうか。
なお、本機からN88-BASIC(86)BASICシステムディスクは添付されなくなった。どうやらDISK BASICにも終わりが来た。
ラインナップ
- PC-9801FA2
5.25インチ×FDD2台。
HDDなし(内蔵可/SCSI)。
価格458,000円 - PC-9801FA/U2
3.5インチ×FDD2台。
HDDなし(内蔵可/SCSI)。
価格458,000円 - PC-9801FA5
5.25インチ×FDD2台。
40MBHDD内蔵(SCSI)。
価格578,000円。 - PC-9801FA/U5
3.5インチ×2台。
40MBHDD内蔵(SCSI)。
価格578,000円。 - PC-9801FA7
5.25インチ×2台。
100MBHDD内蔵(SCSI)。
価格648,000円。 - PC-9801FA/U7
3.5インチ×2台。
100MBHDD内蔵(SCSI)。
価格648,000円。
PC- 9801FAはi486SXの16MHzを採用したが、互換機メーカーのエプソンではこれより安い値段で出していたし、同価格でi486SX 20MHzのものもあり、ハードスペックの割に高額な印象が否めなかった。当時Oh!PCの「PC- 9801FAは買いだ!」という記事の影響もあったのか、その割にはよく売れていた。
オプション
- PC-9801FA-02:SCSIインタフェースボード。内蔵HDDやファイルスロット機器増設に必要。専用スロットに実装。PC-9821Aシリーズでも使用可。
ファイルスロットはFDDの下に設けてあり、SCSI仕様の機器が押し込むだけで簡単に取り付けられる。インタフェースはバックにSCSIカード専用スロットがあるので、そこに取り付ける。これは、内蔵HDDと共用で、SCSI I/Fには増設コネクタがあり、外付け機器を増設することができる。.ファイルスロットは、PC-9821Aシリーズにそのまま引き継がれた。ファイルスロット対応機器は、NEC純正品の他、サードパーティからもMOやCD-ROMドライブなどが発売された。
機器の内部増設が簡単になった
増設メモリやHDDの取り付けは、本体カバーを開けずに、前面パネルを外せばすぐできるように作り直されており、ユーザーに優しい設計と言える。コプロセッサも前面パネルを外せばマザーボードが現れ、ソケットが見えるので、すぐに取り付けられる。
拡張スロットは、ドライバー式をやめ、手で回してねじ込む方式のドライバーレスビスに改められた。
割高感が否めないシリーズ
当時、DOS/Vマシンという名で、PC/AT互換機が参入しつつある時期であった。PC/AT互換機は486DX 33MHzマシンが30万円台で出ていたことを考えると、PC-9801のフラグシップ機であるFAは希望小売価格458,000円(おそらく実売価格は368,000円位と思うが)、しかも16MHzの486SXだから、割高感が否めない。
1992年12月になると秋葉原などで営業していたステップでは、FAの希望小売価格458,000円に対し、NECも対策を講じたのか、実売価格は268,000円にまで下がっていた。そのためFA/FS/FXのラインナップは短く、最後まで残ったのはFAだけだった。
寸評:実売価格の下がったフラグシップ機
結論
PC-H98シリーズに遠慮してか、CPUは486SXの16MHzを採用していたが、いくら386DXの20MHzよりも1.6倍速いといっても目に見えるCPUクロックが16MHzに下がってしまっては「最先端技術をいく98」のイメージが損なわれ、「98は驕り高ぶっている」というネガティブイメージを持たれてしまう。最低でも20MHzのCPUクロックは維持してほしかった。前年出したPC-H98smodel8/U8を見れば、それは可能だったと思う。
Windows3.1時代とPC-9801FA
PC-9801FAは、まがりなりにも486マシンなので、快適性は別としてWindows3.1を稼働させることは可能だ。CPUにはODPを取り付けたり(サードパーティから487SXソケットに取り付けるためのODPが販売された)、PC-9801-86ボードを拡張スロットに入れてPC-9821Aと同じサウンド環境を実現したり、ウィンドウアクセラレータを入れて高解像度を実現したりすることもできる。勿論CD-ROMドライブをファイルスロットに取り付け、Windows3.1のインストールに使ったり、音楽再生に使うこともできる。CD-ROMドライブは、スピーカーやMS-DOSアプリのセットも販売されており、MS-DOS環境でも音楽CDを再生して楽しめた。