「16ビットパソコンは高次元へと限りなく加速する」※VM0/VM2
「拡がるビジネス・パワーを実感させるこの性能」※VM4
PC-9801のベースとなったのはこのVMシリーズからで、2HD/2DD両用FDDの採用、アナログディスプレイ接続など、基本となる機能が採用されている。その後のモデルチェンジでは、286や32ビットCPUの採用、EGCの採用などが行われたが、サードパーティーは新機能には特化せず、あくまでも「早いVM」としてハードやソフトを開発しており、16ビット機の標準機といえるマシンである。
PC-9801VMスペック
- CPU
μPD70116-10(V30) 10/8MHz
※切り替えて使用。 - コプロセッサ
i8087
※メインCPU8MHz時のみ使用可 - ROM
N88-BASIC(86)及びモニタ96KB - メインRAM
384KB。最大640KB。
※メモリ増設時は専用スロット内にPC-9801-21K(128KB)を使用すると拡張スロットを占有しない。 - VRAM
192KB - テキストRAM
12KB - テキスト表示
80文字×25行、80文字×20行 40文字×25行、40文字×20行
※上記のいずれかを選択可
文字及びグラフィック記号(248種)
キャラクタ単位にアトリビュート設定可。リバース、ブリンク、シークレット、カラー8色(黒、青、赤、マゼンタ、緑、シアン、黄、白)。 - カラーグラフィックス表示
640×400ドット時2画面
640×200ドット時カラー4画面
※4096色中8色表示。16色ボード(PC-9801-24)装着時4096色中8色表示。(アナログRGBディスプレイ接続時)
※8色表示(デジタルRGBディスプレイ接続時) - モノクログラフィックス表示
640×400ドット時8画面
640×200ドット時16画面 - 画面合成
テキスト画面/グラフィックス画面合成時優先順位設定可 - バックグラウンドカラー
8色指定可 - 日本語表示
文字構成:16×16ドットゴシック体。
テキスト画面/グラフィックス画面どちらにも表示可
JIS第一水準2,965種/第2水準漢字3,384種、非漢字885種標準搭載。
※拡張漢字(388種)はオプション
ユーザー定義文字188種設定可。
画面構成:40文字×25行、40文字×20行 - ビデオ出力
アナログRGBセパレート信号出力(75Ωアナログインタフェース、カラー)
RGBセパレート信号出力(TTLインタフェース、カラー)
コンポジットビデオ信号出力(輝度変調、モノクロ)※ライトペン接続可
家庭用テレビ出力可(別売TVアダプタ経由) - キーボード(スカルプチャータイプ)
JIS標準配列準拠、テンキー、コントロールキー、10ファンクションキー、キャピタルロック可、HELP、COPY、BS、INS、DEL、XFER、NFERキー
セパレートタイプ(本体とカールケーブルにより接続) - FDD
VM0:PC-98XA-05内蔵可
VM2/VM4:5.25インチ2HD/2DD2台内蔵 - FDD増設
3/4台目外付けI/F内蔵(2HD) - HDD
VM0/VM2:使用可(I/Fボード別売)
VM4:本体内20MB内蔵。外付けHDD端子付き(SASI) - プリンタI/F
8ビットパラレルインタフェース。セントロニクス社仕様準拠 - シリアルI/F
RS-232C準拠 - マウスI/F
バスマウス接続可 - カセットI/F
オプション、拡張スロットに内蔵(PC-9801-13) - サウンド機能
オプション - スピーカー内蔵
- 拡張スロット
2個(16ビットのCバス仕様) - カレンダ時計
電池によるバックアップ - 電源
AC100V±10%、50/60Hz - サービスコンセント
1個 - 温湿度条件
10~35℃、20~80%(但し結露しないこと) - 外形寸法
VM0/VM2:420(W)×345(D)×150(H)㎜
VM4:470(W)×345(D)×150(H)㎜
キーボード:470(W)×195(D)×38(H)㎜ - 重量
VM0:8.3kg
VM2:10.3kg
VM4:12.5kg
キーボード1.2kg - 消費電力
100W(最大120W) - 添付品
ガイドブック、ユーザーズマニュアル、リファレンスマニュアル、リファレンスブック、N88-BASIC(86)システムディスク、デモンストレーションプログラムディスク、モノクロディスプレイケーブル、お客様登録カード、サービス網一覧、保証書 - 発売年
VM0/VM2:1986/5
VM4:1985/9 - 本体標準価格
VM0:295,000円
VM2:415,000円
VM4:830,000円
前モデルM2では2DDのFDが読み書き出来ないという問題は、VMシリーズの2HD/2DD両用FDDの採用で解決した。
VM0は8インチFDDなどすでに外付けFDDを持っている人向けに設定されたマシンだが、後からFDDを内蔵することも出来る。但しそうするとVM2と変わらない価格なので、取り付ける手間を考えれば最初からVM2を買う方が良さそうである。
VM4はSASI規格のHDDを内蔵しており、外付けHDDを取り付ける端子が出ている。内蔵HDDを収めるため、本体幅は50㎜ほど大きくなっている。
VMシリーズと合わせて発売されたオプションには次のものがある。いずれも拡張スロットに搭載する。
- PC-9801-26K:FM音源ボードで、FM音源3音/SSG音源3音の計6重和音8オクターブを実現。ボード上にスピーカーが搭載され、外部スピーカー端子とMSX規格のジョイスティックポートが2個出ている。価格25,000円
- PC-9801-25:スーパーインポーズボード。PC-9801の画面とテレビやビデオ画面と合成が出来る。合成画面のVTR録画も可能。使用時は640×200ドット画面に対応するCRTが必要で、640×400ドット専用CRTでは使用できない。V30CPUでのみ使用可。価格58,000円
NECはPC-9801はビジネス用として位置づけてはいたが、ホビー用途で使うことも否定しなかった。これが富士通のFM-16β等とは決定的な違いで、PC-9801ではゲームソフトも相当開発され、PC-9801を購入すればビジネスにもホビーにも使える、ということから、日本標準機という地位を獲得できたのであった。
PC-9801はOSにはIBM PCで採用されたMS-DOSを主力にしており、市販ソフトを買えば必ずMS-DOSが付いてきた(2.*まで)。富士通FM-16βは主力から外れたCP/M86を主力にしたのが失敗だったという人もある(その後MS-DOSに変更)。
その後のモデルチェンジではEGCによるグラフィックスの高速化や32ビットCPUの採用などが行われたが、サードパーティはあくまでも「早いVM」というコンセプトでソフト開発を行っており、MS-DOSアプリは「VM/UV以降」なら問題なく使えたのである。
EPSON互換機も「早いVM」をコンセプトに製品開発を行っていた。
このVMシリーズで人気だったのはVM2で、当時割引を入れても本体+CRT+マウス+プリンタのセットで50万近くになったとは思うが、それにしてもよく売れたというショップが多かったそうであり、発売と同時にベストセラー機になっている。
寸評:PC-9801スタンダードマシン
結論
ビジネスからホビーまで使いたい人にお勧めしたいマシンである。最初はVM2にCRTとマウスをセットして、余裕が出来たらメモリを640KBにまで増設すると良い。後は拡張スロットにEMSを設定すれば、1992年位までは十分に使えたのではなかろうか。