「98DO(ドゥ)は、98と88のソフトが1台で楽しめる、生まれながらのマルチタレントです。」
PC-98DOは、基本スペックはPC-9801VM11とPC-8801MHを合体させたマシン。PC-98DOの「DO」は、楽しいの「DO」とする、やるの「DO」をかけたものらしい。
PC-88VAシリーズはV1/V2モード時互換性が不十分だったことやPC-8801M型番機と比べて10万円高くなったこと、さらにPC-9801自体が競合製品となったこともありわずか2年で幕引きとなった。そこでNECはPC-8801ユーザーをそっくりPC-9801に移行してもらうべく出したのがPC-98DO、ということだった。計画では5万台の出荷を予定していたとの話もある。
この当時どこかのメーカーでは598,000円なので愛称を「ごくみ」にするとか、ネーミングにも脳天気なマシンが多いのは何とも嘆かわしいという人もいた。
イメージキャラには斉藤由貴を起用。
PC-98DOスペック

- CPU
98モード時V30を8MHz/10MHz切り換え。
88モード時(N)μPD7008AC(Z80H相当品)4/8MHz切り替え - ROM
98モード時N88-BASIC(86)及びモニタ96KB。
88モード時N88-BASIC他128KB - メインRAM
98モード時:640KB
88モード時:192KB - ビデオRAM
98モード時:RAM256KB
88モード時:RAM48KB - テキストRAM
98モード時:RAM12KB
88モード時:RAM4KB - テキスト表示
英数カナ80文字×25行/80文字×20行/40文字×25行/40文字×20行。
キャラクタ単位にアトリビュート設定可。リバース、ブリンク、シークレット、カラー8色(黒、青、赤、マゼンタ、緑、シアン、黄、白)。
※88モード時のV2時のみ512色中8色選択可。 - カラーグラフィックス表示
■98モード時
640×400ドット2画面
640×200ドット4画面
※各4096色中16色表示。
■88モード時
640×200ドット1画面
※8色。
※88モード時のV2時のみ512色中8色から選択可。 - モノクログラフィックス表示
■98モード時
640×400ドット時8画面
640×200ドット時16画面
■88モード時
640×400ドット1画面
640×200ドット時3画面 - 画面合成
可(98モード時のみテキスト・グラフィックス画面優先順位設定可) - バックグラウンドカラー
■98モード時
8色表示可(専用高解像度ディスプレイ使用時)
■88モード時
8色中1色指定可
512色中1色指定可 ※N88-BASICのV2モードのみ可能 - 漢字表示
JIS第1/JIS第2水準(16×16ドット)等7,600文字標準装備。
※98モード時のみユーザー定義文字188種設定可。
40文字×25行/40文字×20行。
※98モード時のみテキスト/グラフィックス両画面に表示。
※88モード時はグラフィックス画面のみ表示。 - キーボード
(スカルプチャータイプ) JIS標準配列準拠、テンキー、コントロールキー、10ファンクションキー、キャピタルロック可、HELP、COPY、BS、INS、DEL、XFER、NFERキー。
セパレートタイプ(本体とカールケーブルにより接続) - シリアルI/F
RS232C準拠 ※98モードのみ - プリンタI/F
セントロニクス社仕様準拠 - マウスI/F
バスマウス仕様 - CRT接続
アナログRGB - サウンド
FM音源/SSG音源各3重和音の計6重和音8オクターブ、外部オーディオ接続端子付き - 拡張スロット
16ビットのCバス1個 ※98モードのみ - 内蔵FDD
5.25インチFDDを2台内蔵。
※98モードは2HD/2DD。88モードは2HD/2 - HDD
外付け可(I/Fボード別売) ※98モードのみ - サービスコンセント
1個 - 電源
AC100V±10%、50/60Hz - 使用条件
10~30℃,20~80%(但し結露しないこと) - 外寸
本体:W380×D335×h128㎜
キーボード:W435×D180(D)×H34㎜ - 重量
本体:8.7kg
キーボード:1.2Kg - 添付品
キーボード、電源ケーブル、ケーブルラベル、サービス網一覧表、お客様登録カード、保証書等 - マニュアル
ガイドブック、日本語N88-BASIC(86)関連(入門書、ユーザーズマニュアル、リファレンスマニュアル)等 - FD
日本語N88-BASIC(86)システムディスク、88モード用システムディスク(システム及びフォーマットコマンド、バックアップコマンド格納) - 価格
298,000円 - 発売
1989年6月
※システムディスクは98モード用であるN88-BASIC(86)のみが付属し、MS-DOSやN88-BASIC(88モード用)はオプション。
動作制限
98モード時:数値演算コプロセッサの使用は不可。
88モード時:辞書ROMは内蔵されていない。PC-8801用拡張カードの使用は不可。RAM増設は不可。ハードディスクの使用不可。RS-232Cインタフェースの使用不可。キーボード/マウスはPC-9801用のものを使用。
オプションの例
PC-88d42-MW:N88-BASICシステムディスク。88モード用。
PC-88VAではテキスト文字(英数)がPC-9801に近い8×16ドット表示となり、CRTCはPC-8801mkIISR以降とは異なるため、この機能を利用するゲーム関係ソフトが動作しないという憂き目に遭った。そこで、PC-98DOでは88モード時PC-8801mkIISR以降と互換性のあるものに変更し、問題なく動作するようになっている。
デザインはPC-9801をベースとしながらも、FDDは横並びで、PC-8801を同居させていることを示している。
88/98ユーザー双方から敬遠されたマシン
88モードでゲームをするにしても、PC-8801用のジョイスティックやマウスが使えないこと、またMA2相当の機能、といっても実際はMH相当のサウンド機能だった。
98モードでビジネスに使うにしても、拡張スロットは一つしかなく、HDDインタフェースを入れたらEMSメモリは入れられない、かといってEMSメモリを入れたらHDDは使えない、という状況で、一太郎など市販ソフトを使うのにも不自由がある。ビジネスソフトの大部分はHDD使用を前提としたもので、SCSI仕様のHDDを接続したらEMSを設定しないとメモリ不足で動作しないことも往々にしてある。I/O拡張ユニットを購入すれば拡張スロットの問題は解決するにしても、普通このクラスのマシンで使用することは考えにくい。
「笑えるマシン」といったらいいすぎ?
こういう見方をする人もいたので書いておきたい。
「よいパソコン悪いパソコン(大庭俊介+PUG編著。JICC出版局-現在の宝島社-より出版)」では、何時も試用してから「いざ使ってみると」に続いて「結論」に進んでいるが、今回は発売直後で時間がなく試用することができなかったらしい。以下はその要旨です。
このマシンは発売直後のため、実際に試用することはできなかったが、スペックを見る限りどうしようもないマシンであることが分かる。PC-9801の手詰まり状況を打開するために、とっくに終わっているPC-8801を持ち出す感覚は理解のしようがない。
おそらくパパが98モードで仕事に使い、子供が88モードでゲームを楽しむということだろうが、ファミコンのゲームに慣れた子供には見向きもされないだろう。また、仕事で使おうにも、ハードディスクインタフェースがオプションでは、決して安い買い物とは言えない。
大人から子供までバカにしためちゃくちゃなコンセプトのこのマシンを、今年最大の「笑えるマシン」といったらいいすぎだろうか。
結論:今年中になくなりそう
結論
仕様を見る限り、機能の中途半端さに加えて、使い勝手の悪さが非常に目立っており、普通の神経だったら絶対に手を出さないはず。これを買うならPC-9801とPC-8801の12台両方揃えた方がソフトもハードも全く問題なく使える。