PC98-NX NEC版PC/AT互換機への転換の潮時

長年独自規格のPC-9801を発売してきたNECは、1997年ついに方向転換。PC/AT互換機路線へと転じました。決断というよりはこの辺が潮時だと判断しただけでしょう。MATE/LAVIE/VALUESTAR等のブランド名を引き継ぎ、PC98-NXシリーズを発売します。

PC-9801とはハイフン(-)の位置が違い、PC-98NXではないとされていましたが、近年ではNECが作成したマニュアルでも「PC-98NX」の表記が見られます。

「歴史的方向転換」ではなく単に「潮時」だと判断しただけでしょう...

PC-9801が一時期国内シェア98%といわれるほど普及したのは、当時の経営トップ(1980/6~1994/6)がPC-9801の普及に尽力を尽くしたからとも言えます。1993年にはPC-9821Aシリーズを発売します。PC-9821は「21世紀に向けたPC-9800シリーズ」の意味合いが込められており、当時の経営トップがPC-9801に固辞していたとも言えます。

1994年に経営トップが交代後は情勢が変わったのでしょうか、Windows95がアナウンスされるようになったのは1994年10月前後です。すでにこの頃から「何時PC-9801をやめてPC/AT互換機路線に移行するか」考えていたような気もします。当時の主力機PC-9821XシリーズではPC/AT互換機と共通する部品が多く採用されており、特にPCIバスの形状はPC/AT互換機用と同じものを採用していました。異なる点はごく僅かであり、「何時でもPC/AT互換機路線に移行できる」と考えていたようにも感じられます。

1996年にはPC/AT互換機のサーバー機であるExpress5800シリーズなどの発売を開始しています。

PC98-NXは1997年9月24日に発表、10月23日に発売開始されました。歴史的方向転換を決断したといわれることがありますが、決断したのではなく、単に潮時だと判断しただけでしょう。元々NECは海外ではPC/AT互換機を発売しており、何時でも国内展開することは可能でした。

「PC-9800シリーズでもPC/AT互換機でもない独自のシリーズ」は誤解を招く結果に

PC98規格はPC/AT互換機をベースにした規格であり、拡張した規格です。PC98-NXはPC98規格で開発されたわけですかられっきとしたPC/AT互換機の一つですし、取扱説明書にはソフトや機器はDOS/Vパソコン用のものをお使い下さいとも書かれています。添付のWindows95 CD-ROMにもはっきり「PC/AT互換機用」とあります。

「PC-9800シリーズでもPC/AT互換機でもない独自のシリーズ」とか「新世界標準パソコン」という広告コピーは、PC-9800シリーズでもないしPC/AT互換機でもないから、従来のソフトやハードが使えないという誤解を招くこととなり、販売は順当ではなかったようです。さらにWindows98 / WindowsNT5.0(Windows2000)の開発が遅れていたことも販売が順当でなかった一つの要因だったようです。

当時のPC/AT互換機はまだUSB対応機器が少なく、P/SコネクタやISAバスなどいわいるレガシーI/Fに接続する機器の方が一般的でした。モデムはRS-232C、プリンタはパラレルI/Fに接続するようになっていたし、キーボード/マウスはPS/2コネクタに接続するようになっていました。拡張スロットはPCIとISAバス両方が使われていて、ビデオカードはPCIバスに挿し、サウンドカードなどはISAバスに挿すのが一般的でした。

ところが、PC98-NXは独自性を打ち出すあまり、USBコネクタとPCIバススロットしかない極端なレガシーインタフェースフリーとしました。PC/AT互換機用ソフトでもレガシーI/Fが存在しないと動作しないものもあります。このためシリーズ転換期には混乱が生じて、PC-9821とPC/AT互換機双方のユーザー層から非難を浴びることとなります。

こういったことから、しばらくはPC-9821を購入するユーザーも少なくなかったようです。

翌1998年にはレガシーI/Fを搭載する方向転換を行い、PC/AT互換機をベースにしていることを広告に加えました。PC98-NXはれっきとしたPC/AT互換機ですが、当時のNEC関係者はそれを認めたくなかったのか、「新世界標準パソコン」「PC-9800シリーズでもPC/AT互換機でもない独自のシリーズ」と広告に打ってしまったようなところが見受けられます。

発売当初のPC98-NXは論理的にも物理的にもレガシーI/Fが存在していて、単に筐体に穴が空いていないだけのものもあり、中には、端子を取り付ける改造をした強者ユーザーもいたことがネットで散見されます。

発売当時はMATE-NX、LAVIE-NXというように「NX」のキーワードがブランド名につけられていましたが、21世紀に入ると「NX」のキーワードはブランドから外され、いつの間にか「PC98-NX」の名称さえも使われなくなっています。

なお、PC-9801活用誌「Oh!PC」は、PC98-NX発売後も暫く刊行されましたが、2000/8号をもって休刊、事実上の廃刊となりました。1982/6号創刊以来、18年近くも発行されたOh!シリーズの中では最も長く続いた雑誌でした。

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あとがき
PC98-NXは他社製PC/AT互換機と比べると価格が高かった。同じPC/AT互換機なのに価格が高いのでは敢えてNECを選ぶ理由がなく、一時富士通に国内シェア一位を奪われたこともあった。現在はPC98-NXブランドは終了しており、個人向けはノートPCもデスクトップPCもブランドはLAVIEに統一されている。企業向けブランドはMATEがラインされている。
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